開心術中の心筋酸素化をリアルタイムモニタリング:新技術eNIRSの可能性

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解説対象論文: Intraoperative monitoring of myocardial oxygenation during open-heart surgery: feasibility and initial performance
Journal of Clinical Monitoring and Computing|被引用数: 0(2026年9月26日時点)

心臓外科手術、特に体外循環を伴う開心術における心筋保護は、その複雑さから常に課題を抱えています。現在の心筋保護戦略では、心筋組織レベルでの酸素供給やミトコンドリアの代謝状態に関する連続的な情報が不足しており、虚血の期間や重症度を正確に把握することが困難でした。この度、発表された新しい研究は、拡張近赤外分光法(eNIRS)を用いたリアルタイムの心筋酸素化モニタリングが、この課題を解決し、術中の意思決定をサポートする可能性を示しています。本記事では、この革新的な技術の実現可能性と初期性能について、専門的な視点からわかりやすく解説します。

研究サマリー(FINER & PICO)
Feasible実施可能性 15名の成人開心術対象者全員で術中のeNIRSモニタリングが安全かつ安定して実行可能であることを確認。
Ethical倫理面 倫理委員会承認済み(HUS/2658/2020)、ClinicalTrials.govに登録(NCT05479968)、書面による同意取得済み。
Interesting面白さ 心筋保護戦略を個別化するため、心臓手術中の心筋酸素供給と利用に関するリアルタイム情報を初めて提供する。
Novel新規性 心臓手術中に心筋組織レベルの酸素状態とミトコンドリア代謝状態を継続的に評価する新しいアプローチ。
Relevant切実さ 心臓手術における心筋虚血再灌流傷害や心不全のリスクを軽減し、対象者の転帰改善に寄与する可能性。
Measurable測定可能性 eNIRSはSHb/MbとOCcOを定量的かつリアルタイムで測定し、OCcOは心筋麻痺液量と強い相関を示した。
Modifiable派生・改善 リアルタイムデータは、心筋保護戦略の適応的調整や術中の意思決定支援に貢献しうる。
Structured文章構造 前向き単施設実現可能性研究として実施され、構造化されたユーザビリティフィードバックと統計解析を含む。
PICO / PECO対象・介入・比較・結果 P:開心術を受ける成人。I:心筋eNIRSモニタリング。C:標準的な間欠的心筋麻痺液プロトコル。O:実現可能性、安全性、臨床性能、ユーザビリティ。

心臓手術における心筋保護の新たな地平

どうも、Beyond the Pixelです。心臓外科手術は、その複雑さから高度な技術と注意を要する医療行為です。特に、体外循環(CPB)を使用する開心術では、心臓を一時的に停止させ、心筋麻痺液(cardioplegia)を間欠的に投与することで心筋を保護します。しかし、これまでの心筋保護戦略は、心筋組織レベルでの酸素供給やミトコンドリアの代謝状態に関する連続的な情報が不足しており、標準化されたプロトコルと間接的な指標に頼っていました。これにより、虚血(酸素不足)の期間や重症度を正確に把握することが困難でした。本日は、この課題に対し、拡張近赤外分光法(eNIRS)を用いたリアルタイムの心筋酸素化モニタリングがどのように役立つかを探った最新の実現可能性研究をご紹介します。この研究は、心臓手術中の心筋保護戦略を個別化し、術中の意思決定をサポートする可能性を秘めています。

eNIRSとは?心臓の酸素状態を詳細に把握する技術

近赤外分光法(NIRS)は、組織内のヘモグロビン(Hb)、ミオグロビン(Mb)、そしてチトクロムcオキシダーゼ(CcO)の吸収スペクトルを測定することで、局所的な酸素化動態をリアルタイムで評価できる臨床技術です。この技術は、脳の血行動態モニタリングなどに広く応用されています。特に、eNIRSは、広帯域の可視光および近赤外スペクトルを心筋に直接適用することで、ヘモグロビン/ミオグロビン酸素飽和度(SHb/Mb)とチトクロムcオキシダーゼ酸化比(OCcO)を継続的かつリアルタイムで測定します。心筋の酸素利用の大部分を担うミトコンドリアの酵素であるCcOの酸化状態の変化は、細胞レベルでの酸素利用の敏感な指標となります。eNIRSは、心臓における酸素供給とミトコンドリアの酸素利用の両方を捉えることで、手術中の心筋酸素化に関する包括的な情報を提供します。この研究では、SpectroCor組織酸素化モニターとセンサーを使用しています。

研究の目的と方法:開心術でのeNIRSの実現可能性を検証

この前向き単施設実現可能性研究の主な目的は、開心術を受ける成人対象者において、SpectroCor組織酸素化モニターとセンサーを用いた術中の心筋eNIRSモニタリングが実現可能で安全であるかを評価することでした。二次的な目的として、心筋麻痺液の断続的な投与量に対するOCcOの反応が、心筋麻痺液の量と相関するかどうかを検証することで、初期の臨床性能を探求しました。また、将来の技術開発と臨床統合に役立てるため、専門家と看護スタッフからの構造化されたユーザビリティフィードバックも収集されました。この研究は、大動脈弁置換術、または冠動脈バイパスグラフト術のいずれか、あるいは両方を受ける15名の成人対象者に対して実施されました。対象者の特性や手術の種類は

Table 1
Table 1. Table 1 Patient demographics, operation types, and duration of myo­ cardial oxygenation monitoring. Abbreviations: BMI, body mass index; BSA, body surface area; AVR, aortic valve replacement; CABG, coronary artery bypass grafting Age (mean ± SD, min–max) 61.07 ± 7.68, 46–70 Sex, male 11 (73.3%) Sex, female 4 (26.7%) BMI (mean ± SD, min–max) 28.45 ± 5.19, 20.59–38.06 Obese (BMI ≥ 30) 5 (33.3%) Procedure, Biological AVR 11 (73.3%) Procedure, Mechanical AVR 3 (20.0%) Procedure, Biological AVR and CABG 1 (6.7%) Duration of monitoring, minutes (mean ± SD, min–max)解説: 対象者の人口統計学的特性、手術の種類、心筋酸素化モニタリングの期間の概要です。BMI(体格指数)やBSA(体表面積)、AVR(大動脈弁置換術)、CABG(冠動脈バイパスグラフト術)などの略語が含まれています。

に示されています。心筋センサーは、体外循環開始後に左心室前壁に挿入され、手術終了時に抜去されました。モニタリングは平均82.07分行われ、全対象者で成功裏に実施されました。

主要な結果:eNIRSモニタリングの安全性と実用性

研究の主要な実現可能性の目的は達成されました。eNIRSモニタリングは全15名の対象者において成功裏に実施され、デバイスに関連する有害事象は一切観察されませんでした。術中の大動脈クランプ、心筋麻痺液投与、再灌流といった主要な外科的処置によって引き起こされる虚血再灌流の変化を含め、SHb/MbとOCcOの安定した定量的シグナルがリアルタイムで継続的に記録されました。これは、eNIRSモニタリングが標準的な外科的ワークフローに技術的に統合可能であることを示しています。

Figure 2
Figure 2. Fig. 2 Representative graphs of continuous real-time monitoring of myocardial hemoglobin/myoglobin oxygen saturation (SHb/Mb) and cytochrome c oxidase oxidation ratio (OCcO) during an aortic valve replacement operation. The monitor records cardioplegia perfusion- induced increases in oxygenation and oxygen utilization. The sensor was inserted just before the aortic clamping. Myocardial oxygenation starts increasing when antegrade blood cardioplegia is administered (A). During the first cardioplegia, the surgeon changed the adminis­ tration route to retrograde (B), and during the change, a short inter­解説: 大動脈弁置換術中の心筋ヘモグロビン/ミオグロビン酸素飽和度(SHb/Mb)とチトクロムcオキシダーゼ酸化比(OCcO)の連続リアルタイムモニタリングの代表的なグラフ。心筋麻痺液の灌流によって誘発される酸素化と酸素利用の増加が記録されています。

は、大動脈弁置換術中のSHb/MbとOCcOの連続的なリアルタイムモニタリングの代表的なグラフを示しており、心筋麻痺液投与による酸素化と酸素利用の増加が明確に観察できます。また、術後集中治療室での滞在期間の中央値は1日であり、術後の心臓超音波検査では、右心室および左心室機能が術後7日目までに術前のレベルに戻ったことが示されました(

Figure 3
Figure 3. Fig. 3 Echocardiography of left ventricular (LV) and right ventricular (RV) functions preoperatively (0 postoperative day, pop) and at 1, 3, and 7 pops. LV deformation and motion assessed by (A) LV strain and (B) LV Velocity Vector Imaging. RV global systolic function and longitudinal contraction measured by (C) RV Fractional Area Change and (D) Tricuspid Annular Plane Systolic Excursion (TAPSE). There is a trend of stunning of myocardium, which returns to normal at day 7. * p < 0.05, ** p < 0.01, *** p < 0.001解説: 術前(術後0日)および術後1日目、3日目、7日目における左心室(LV)および右心室(RV)機能の心エコー図。LVひずみ、LV速度ベクトルイメージング、RV面積変化率、三尖弁輪部収縮期移動距離(TAPSE)が示されています。心筋のスタンニングの傾向が見られますが、術後7日目には正常に戻っています。

)。心臓手術に関連する有害事象は13件報告されましたが、これらはデバイスに関連するものではありませんでした(

Table 2
Table 2. Table 2 Adverse events. Abbreviations: FA, atrial fibrillation; SVT, supraventricular tachycardia; VT, ventricular tachycardia; AV, atrio­ ventricular; TIA, transient ischemic attack Adverse Event (AE) Number of incidents解説: 有害事象のリストです。FA(心房細動)、SVT(上室性頻拍)、VT(心室性頻拍)、AV(房室)、TIA(一過性脳虚血発作)などの略語が使用されています。デバイス関連の有害事象は報告されていません。

)。

臨床的性能とユーザビリティ:リアルタイム情報がもたらす価値

心筋の代謝に必要な酸素供給が間欠的な心筋麻痺液投与によって行われることを考慮し、研究チームは心筋麻痺液の量とeNIRSモニタリングの性能との関連を評価しました。結果として、OCcO反応曲線下面積(AUC)は心筋麻痺液の投与量と強く相関していることが示されました(r = 0.68, p < 0.0001)。これは、eNIRSモニタリングの優れた性能と生理学的妥当性を裏付けるものです(

Figure 4
Figure 4. Fig. 4 Mitochondrial oxygenation status improvement (OCcO, area under curve) correlated with the intermittently administered blood car­ dioplegia volume (r = 0.68, p < 0.0001; N = 29 cardioplegia administra­ tions in a total of 15 surgeries)解説: ミトコンドリア酸素化状態の改善(OCcO、曲線下面積)と、間欠的に投与された心筋麻痺液の量との間に相関があることを示すグラフです(r=0.68, p<0.0001; 15件の手術における合計29回の心筋麻痺液投与)。

)。SHb/MbとOCcOがリアルタイムで観察され、外科的イベントと時間的に一致したことから、心筋eNIRSによって提供される情報は、術中の状況において即座に解釈可能であることが示されました。この研究は介入を導くように設計されたものではありませんでしたが、虚血期間と心筋麻痺液に対する代謝反応を視覚化できる能力は、術中の意思決定をサポートするためのモニタリングの潜在的な価値を強調しています。また、専門家(外科医87%、麻酔科医85%)および補助看護師(74%)からのユーザビリティフィードバックは、心筋eNIRSモニタリングの実現可能性と術中のワークフローへの統合性に関して非常に好意的でした。特に、外科医と麻酔科医は、左右両心室の心筋eNIRSモニタリングがもたらす臨床的価値と、心筋麻痺戦略を導く可能性を強調しました。

今後の展望と研究の限界

この研究は、開心術中にリアルタイムの心筋組織酸素化モニタリングを使用することの実現可能性を明確に示しました。eNIRSが提供する継続的なリアルタイム情報は、手術中の心筋保護戦略を改善し、迅速なフィードバックを提供することに直結する可能性があります。現在の心臓手術における急性心血管機能不全は約20%の対象者で発生しており、術中の意思決定はしばしば経験に頼っています。eNIRSモニタリングは、心筋麻痺液投与に対する心筋の不十分な灌流と酸素化反応を即座に検出し、心筋が酸素のない時間を最小限に抑えるための有用で実用的な情報を提供できます。特に、虚血時間が延長される複雑な心臓手術では、心拍出量低下症候群(LCOS)などの合併症が頻繁に発生するため、eNIRSモニタリングが大きな利点をもたらす可能性があります。eNIRSは、酸素供給とミトコンドリアレベルでの酸素利用の両方をモニタリングすることで、心筋に対するユニークで包括的な洞察を提供します。CcOのモニタリングは、心筋酸素利用に関する情報を提供するだけでなく、虚血再灌流傷害や心不全といった潜在的な損傷の予測にも役立つ可能性があります。この研究は実現可能性研究であるため、サンプルサイズが小さく、低リスクの対象者に限定されているという限界があります。より複雑な手術を受ける高リスクの集団での観察は、さらに興味深いデータを提供するでしょう。また、本研究では左心室前壁のみで心筋酸素化を測定しましたが、右心室の心筋酸素化に関する情報も重要です。今後の研究では、より大規模な多施設コホートを含めることで、臨床的有用性をさらに確認する必要があります。しかし、この研究結果は、心筋保護戦略の個別化と周術期ケアおよびアウトカムの改善にeNIRSモニタリングがどのように利用できるかを判断するための、さらなる臨床研究の重要な基盤を提供します。

まとめ

SpectroCor組織酸素化モニターとセンサーを用いた継続的なリアルタイムeNIRSは、開心術において実現可能であり、SHb/MbとOCcOのモニタリングを通じて、臨床的に実用的な組織レベルの酸素化および代謝データを提供できることが示されました。デバイスに関連する有害事象は観察されず、ユーザビリティに関するフィードバックも非常に好意的でした。本研究の結果は、このモニタリングが術中の意思決定を支援し、心筋保護の改善に貢献する可能性を示唆しており、その直接的な臨床的妥当性を裏付け、将来の性能研究の重要な基礎を提供するものです。この技術がさらに発展し、多くの対象者のより安全な手術に貢献する未来に期待が高まります。

用語集

  • 心筋保護: 心臓を外科手術中の虚血(酸素不足)から守るための処置。
  • 体外循環(CPB): 手術中に心臓と肺の機能を一時的に代行する装置。
  • 心筋麻痺液(Cardioplegia): 心臓の活動を一時的に停止させ、保護するために投与される溶液。
  • 拡張近赤外分光法(eNIRS): 組織内のヘモグロビン/ミオグロビンとチトクロムcオキシダーゼの酸素化状態をリアルタイムで測定する技術。
  • ヘモグロビン/ミオグロビン酸素飽和度(SHb/Mb): 組織内のヘモグロビンとミオグロビンに結合している酸素の割合。
  • チトクロムcオキシダーゼ酸化(OCcO): ミトコンドリアの酸素利用状態を示す指標。
  • ミトコンドリア: 細胞内でエネルギーを生成する小器官。
  • 虚血再灌流傷害: 虚血(血流停止)後の血流再開によって組織が受けるダメージ。
  • 大動脈弁置換術(AVR): 病気の大動脈弁を人工弁に置き換える手術。
  • 冠動脈バイパスグラフト術(CABG): 狭くなった冠動脈に新たな血流経路を作る手術。
  • 大動脈クランプ: 手術中に大動脈を一時的に閉鎖する操作。
  • 心拍出量低下症候群(LCOS): 心臓手術後に心臓が十分な血液を送り出せない状態。
  • 曲線下面積(AUC): グラフの曲線の下の領域の総量。ここではミトコンドリア酸素化状態の変化の程度を示す。
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免責事項

発行 Beyond the Pixel 編集部(Visionary Imaging Services, Inc.)

編集責任者 小林 達明(診療放射線技師/博士(情報学)) ORCID

本記事は生成 AI を用いて作成しています。公開後に気づいた誤りは編集部が随時修正します。

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