慢性創傷ケアを革新するAI:深層学習による創傷底組織の自動分類ベンチマーク

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解説対象論文: Automated Segmentation of Wound Bed Tissue from Clinical Photographs: A Benchmark of Five Deep Learning Architectures Under a Shared Protocol
Journal of Imaging Informatics in Medicine|被引用数: 0(2026年10月18日時点)

慢性創傷の治癒をモニタリングし、適切な処置を行う上で、創傷底の組織状態を正確に把握することは極めて重要です。しかし、専門家による目視評価は主観が入りやすく、評価者間でのばらつきが大きいという課題がありました。本研究では、この課題を克服するため、深層学習を用いた創傷底組織の自動かつピクセルレベルでの分類手法を詳細に評価しました。

研究サマリー(FINER & PICO)
Feasible実施可能性 公開データセットと目的別に開発されたアノテーションツール、既存の深層学習アーキテクチャを共通プロトコル下で評価することで、実現可能性が高い研究です。
Ethical倫理面 既存の匿名化された公開データセットのみを使用し、新たな対象者データ生成がないため、人間対象研究としてのリスクは低いです。
Interesting面白さ 専門家の目視評価に依存していた創傷組織分類に、客観的で再現性のある自動評価を導入する可能性を示し、医療現場にとって非常に興味深いテーマです。
Novel新規性 共通プロトコル下で複数の最先端深層学習アーキテクチャのピクセルレベル創傷組織セグメンテーション性能を詳細にベンチマークした点で新規性があります。
Relevant切実さ 慢性創傷ケアにおける治療方針決定の精度向上、モニタリングの一貫性確保、遠隔医療での評価支援に貢献し、対象者の転帰改善につながる可能性を秘めています。
Measurable測定可能性 IoU、Dice、MCC、AUCなどの標準的なセグメンテーション指標と臨床単位換算でのバイアス、一致の限界を用いて、モデル性能と臨床的有用性を定量的に評価しています。
Modifiable派生・改善 様々な深層学習アーキテクチャ(畳み込み、トランスフォーマー、ハイブリッド、アンサンブル)を比較することで、モデル選択と改善のための明確な指針を提供しています。
Structured文章構造 データセットのキュレーションからアノテーション、モデル訓練、評価に至るまで、共通の厳密なプロトコルに従って研究が実施され、比較の信頼性が高いです。
PICO / PECO対象・介入・比較・結果 P: 慢性創傷の対象者、I: 深層学習による創傷底組織の自動ピクセルレベルセグメンテーション、C: 専門家による目視評価、O: 客観的で再現性の高い組織分類および治癒モニタリング。

慢性創傷ケアにおける創傷底評価の重要性と課題

どうも、Beyond the Pixelです。糖尿病性足潰瘍や静脈性下腿潰瘍、褥瘡など、治りにくい慢性創傷は、多くの対象者を苦しめ、医療費を増大させています。これらの創傷では、正常な治癒プロセスが滞ることが多く、創傷表面には生きている組織と死んだ組織が混在します。創傷底にどのような組織が存在し、その割合がどのように変化するかを評価することは、治癒の進行状況を把握し、デブリードマン(死んだ組織の除去)などの治療方針を決定する上で不可欠です。

Figure 1
Figure 1. Fig. 1 The wound bed tissues and their evolution drive clinical deci- sions. At each visit, the clinician identifies granulation, slough, and necrotic tissue and, above all, judges how their proportions change over time; that trajectory guides debridement, dressing choice and解説: この図は、創傷底組織とその変化が臨床的判断をどのように推進するかを示すフローチャートです。専門家は各診察時に、肉芽組織、スラフ、壊死組織を識別し、特にそれらの割合が時間とともにどう変化するかを評価します。その変化の軌跡が、デブリードマン(死んだ組織の除去)、ドレッシングの選択、治療の強化などの介入を導きます。本研究の課題は、これらの組織を自動的かつ再現性高く定量化し、治癒の軌跡を客観的に追跡することです。

特に、肉芽組織(健康な結合組織)、スラフ(柔らかい壊死組織)、壊死組織(硬い死んだ組織)の3種類の組織の相対的な割合が、治療効果の指標となります。

しかし、現在の臨床現場では、この重要な評価は目視で行われています。そのため、専門家間での評価の一貫性が低く、時間経過に伴う同じ専門家による評価でもばらつきが生じることが問題視されていました。これは、遠隔医療など、創傷ケアが提供される環境が多様化する中でさらに顕著になります。客観的で定量的な評価が難しいことで、創傷の治癒過程を正確に追跡し、悪化の兆候を早期に捉え、タイムリーな介入を行うことが困難になっています。この研究では、創傷写真のすべてのピクセルを肉芽組織、スラフ、または壊死組織として自動的に分類する手法を開発・評価し、定性的印象を客観的で再現性のある定量的な測定値に変換することを目指しました。

深層学習による画像セグメンテーション:創傷組織分類への応用

コンピュータービジョンでは、画像の情報を詳細に解析するためにいくつかのレベルがあります。画像全体に単一のラベルを割り当てる「画像分類」、関心のある領域をボックスで囲む「物体検出」に対し、今回の研究で採用されたのは「セマンティックセグメンテーション」という手法です。これは、画像内のピクセル一つ一つにクラスラベルを割り当て、各組織がどこに位置するかを正確に区別する密なマップを生成する技術です。これにより、肉芽組織、スラフ、壊死組織の面積や割合を定量的に測定することが可能になります。

深層学習は、エンジニアが手作業で特徴を設計するのではなく、多数の層を持つニューラルネットワークがデータから有用な画像特徴を直接学習する技術です。十分なラベル付きデータがあれば、ネットワーク自体が異なる組織を区別する色、テクスチャ、形状を発見します。医療画像セグメンテーションでは、主に「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」と「トランスフォーマー」の2つの主要なネットワークファミリーが用いられています。

畳み込みニューラルネットワーク(CNNs)は、画像をスライドして局所的なパターン(エッジや色のグラデーションなど)に反応する小さな学習可能なフィルター(畳み込み)で構成されています。U-Netに代表されるエンコーダー・デコーダー構造では、エンコーダーパスで画像が抽象的な特徴に圧縮され(何があるかを学習)、デコーダーパスで元の解像度に戻されて各ピクセルにラベルが付けられます(どこにあるかを復元)。このプロセスで失われがちな細かい空間情報は、スキップ接続によって再注入されます。DeepLabV3+のような他の戦略では、アトラス畳み込みを用いて高解像度を維持しつつ、複数のスケールの文脈を統合します。

Figure 2
Figure 2. Fig. 2 Encoder–decoder for semantic segmentation. The encoder progressively compresses the image into abstract features (learn- ing what tissue is present), and the decoder upsamples them back to full resolution to label every pixel (recovering where). Skip connec-解説: セマンティックセグメンテーションのためのエンコーダー・デコーダー構造を示しています。エンコーダーは画像を抽象的な特徴へと段階的に圧縮し(どの組織が存在するかを学習)、デコーダーはそれらの特徴を元の解像度に戻し、ピクセルごとにラベル付けします(どこに組織があるかを復元)。U-Netのように、スキップ接続(点線)は、ダウンサンプリング中に失われた細かい空間情報を渡します。DeepLabV3+は、アトラス畳み込みとマルチスケールプーリングを用いて解像度を維持します。

一方、トランスフォーマーは異なるアプローチをとります。画像は小さなパッチのグリッドに分割され、これらが「トークン」として扱われます。セルフアテンションというメカニズムにより、すべてのトークンが他のすべてのトークンと比較され、ネットワークは最初の層からグローバルで長距離の文脈を捉えることができます。SegFormerのような階層的設計では、Mix-TransformerエンコーダーがCNNのように複数のスケールで特徴を生成し、軽量なデコーダーと組み合わせています。Vision Transformer(ViT)は単一スケールのトークングリッドを使用し、SETRはこれを密な予測に用いるためのプログレッシブアップサンプリングデコーダーを追加します。

Figure 3
Figure 3. Fig. 3 Transformer encoder for segmentation. The image becomes a sequence of patch tokens; self-attention models the relationships between all patches at once, the block repeats, and the tokens are reshaped and upsampled into a per-pixel map. Plain Vision Trans- formers (ViT, SETR) use a single-scale token grid, whereas Seg- Former produces multi-scale features like a CNN解説: セグメンテーションのためのトランスフォーマーエンコーダーの仕組みを示しています。画像はパッチトークンのシーケンスに分割され、セルフアテンションメカニズムによってすべてのパッチ間の関係が同時にモデル化されます。このブロックが複数回繰り返され、トークンは再形成されてピクセルごとのマップにアップサンプリングされます。Plain Vision Transformers(ViT、SETR)は単一スケールのトークングリッドを使用し、SegFormerはCNNのようにマルチスケール特徴を生成します。

トランスフォーマーは非常に高い精度を達成できますが、一般的に多くのデータを必要とし、畳み込みネットワークよりも内蔵された空間的仮定が弱いため、臨床研究で典型的な小規模データセットでは課題となることがあります。

本研究では、これら畳み込み、トランスフォーマー、ハイブリッド、アンサンブルといった深層学習アーキテクチャの5種類を評価し、それぞれの特性を比較しました。

Figure 4
Figure 4. Fig. 4 The architectures, by family. Experiments E1–E5 map onto the convolutional, transformer, hybrid and ensemble families; E6 is a post-hoc cross-architecture ensemble that averages the convolu- tional and transformer single models (E1–E3), combining diversity of architecture rather than of random seed (Section " Cross-Architecture解説: 本研究で評価されたセマンティックセグメンテーションモデルのアーキテクチャをファミリー別に分類して示しています。実験E1〜E5は、畳み込み、トランスフォーマー、ハイブリッド、アンサンブルのファミリーに対応しています。E6は、畳み込みおよびトランスフォーマーの単一モデル(E1〜E3)を平均化するポストホックなクロスアーキテクチャアンサンブルを表しており、ランダムシードの多様性ではなくアーキテクチャの多様性を組み合わせています。これらをほぼ共通のプロトコルで比較することで、創傷組織セグメンテーションにおけるアーキテクチャの影響を推定します。

なお、これらのエンコーダーは、数百枚の創傷画像だけで最初から学習されたわけではありません。ImageNetという100万枚以上の自然画像を分類した汎用データベースで事前に学習された重みが転移学習として用いられ、その後に創傷データセットでファインチューニングされています。これにより、限られた医療画像データで大規模なネットワークの訓練を可能にし、過学習を防ぐ効果が期待されます。本研究のプロトコルでは、ImageNetでの事前学習、正規化、低学習率でのファインチューニングが全てのモデルで共通して適用され、アーキテクチャ間の比較における交絡因子を最小限に抑えています。

高精度なアノテーションと厳密な評価プロトコル

この研究の重要な貢献の一つは、高精度なアノテーション(画像へのラベル付け)を可能にした、目的別に構築されたクラスター支援型ラベリングツールの開発です。このツールは、専門家が手作業でピクセルごとに線を描く代わりに、クリック操作で素早く密な組織アノテーションを作成できるように設計されました。

Figure 6
Figure 6. Fig. 6 The custom in-house annotation tool (local HTML/JS app). The clinician opens a wound photo; the app automatically applies k-means colour clustering to segment the wound by colour (the clus- ter count k is adjustable to increase resolution). The photo is repli- cated across three columns, one per tissue colour, red (granulation), yellow (slough), black (necrotic/eschar); clicking a clustered region解説: カスタム開発された社内アノテーションツール(ローカルHTML/JSアプリ)のスクリーンショットです。専門家が創傷写真を開くと、アプリは自動的にK-meansカラークラスタリングを適用して、創傷を色でセグメント化します。写真は赤(肉芽組織)、黄(スラフ)、黒(壊死組織/痂皮)の3つの組織色ごとに3つのカラムに複製され、クラスター化された領域をクリックすることで、その領域全体にカラムのクラスが割り当てられます。このクラスター支援型ワークフローは、手書きでの線引きと比較してラベリングを大幅に加速させます。

具体的には、まずK-meansカラークラスタリングが自動的に画像に適用され、視覚的に異なる組織ゾーンに密接に従う色相の領域に創傷が分割されます。専門家は、赤(肉芽組織)、黄(スラフ)、黒(壊死組織/痂皮)の3つのカラムに複製された写真上で、クラスター化された領域をクリックするだけで、その領域全体にクラスを割り当てることができます。これにより、アノテーション作業が大幅に加速され、同時に一貫性が保たれます。

アノテーションは5人の創傷ケア専門家が共同でコンセンサスに基づいて行われ、全てのゴールデンスタンダードラベルは合意された臨床的判断を反映しています。自動ラベリングは一切使用されていません。

データセットは、公開されている匿名化された創傷画像コレクションから、創傷ケア専門家チームが組織評価に適していると判断した404枚の写真が厳選されました。

Table 1
Table 1. Table 1 Reported dataset sizes for deep learning wound tissue seg- mentation and classification, ordered by number of images. Wound- region datasets (wound versus background), such as the FUSeg/AZH解説: 深層学習を用いた創傷組織セグメンテーションおよび分類に関する公開データセットのサイズを、画像数順にまとめた表です。本研究のデータセットは404枚の画像を含み、赤/黄/黒の組織に対して密で領域精度の高いピクセルラベリングが施されています。多くの既存研究が数十枚から数百枚の画像を使用しており、本研究のデータセットはピクセルレベルの創傷組織セグメンテーションとしては比較的規模が大きいことが示されています。

これらの画像は、70%が訓練セット(282枚)、15%が検証セット(60枚)、15%がテストセット(62枚)に分割され、この分割は固定され、全てのモデル評価に共通して使用されました。

本研究の主要な目的は、どのネットワークアーキテクチャが創傷組織セグメンテーションに最適かを確立することです。そのため、実験間でアーキテクチャ以外の要因が可能な限り変化しないように、共通のフレームワークが採用されました。これには、データ、ラベル、前処理、損失関数、クラスバランス処理、評価方法などが含まれます。

Figure 13
Figure 13. Fig. 13 Experimental pipeline. One curated, version-locked dataset and a single frozen split feed a shared training and evaluation pro- tocol; experiments E1–E4 vary the network under this shared frame- work (with only minor, documented per-model tuning of the loss asymmetry, class weights and optimiser settings; Table 2), while E5

ただし、各アーキテクチャの安定した収束のために、Focal-Tverskyの非対称性、クラス重み、学習率スケジュール、部分的なエンコーダーの凍結、バッチサイズなど、一部のパラメータはモデルごとに調整されました。

Table 2
Table 2. Table 2 Architecture and executed-run configuration for the five experiments. All models share the ROI-restricted supervision, weighted cross-entropy + Focal–Tversky base objective, Weight- edRandomSampler oversampling (boost 4.0) and 4-view flip test- time augmentation described in Section " The Shared Training and Evaluation Protocol"; the rows below list where each model departs解説: 評価された5つの実験におけるアーキテクチャと実行設定の構成をまとめた表です。全てのモデルはROIに限定された教師あり学習、重み付き交差エントロピー+Focal-Tverskyの基本目的関数、WeightedRandomSamplerによるオーバーサンプリング、4ビューフリップテスト時拡張を共有しています。この表は、各モデルが共有プロトコルから逸脱した箇所(Focal-Tverskyの非対称性、クラス重み、オプティマイザ、学習率、正則化など)を詳細に示しています。

これにより、限られたアーキテクチャ固有の調整を伴う、共通フレームワーク下でのアーキテクチャの影響を比較することが可能になっています。

深層学習モデルの評価とアンサンブル戦略の有効性

この研究では、純粋な畳み込みネットワーク(DeepLabV3+)、階層型トランスフォーマー(SegFormer-B3)、非階層型トランスフォーマー(ViT-B/16 SETR)、畳み込み/トランスフォーマーハイブリッド(U-Net/Mix-Transformer)、そしてディープアンサンブル(E5)の5種類の深層学習アーキテクチャがベンチマークされました。さらに、既存の複数の単一モデルを組み合わせるポストホックなクロスアーキテクチャアンサンブル(E6)も検討されました。

モデルの性能は、Intersection-over-Union(IoU)やDice係数、Matthews相関係数(MCC)などのセグメンテーション指標を用いて評価されました。特に、平均IoU(mIoU)は主要な評価指標とされました。

結果として、全てのモデルは平均IoUで0.748から0.818の狭い範囲に収まりました。

Table 3
Table 3. Table 3 Overall performance on the shared frozen test set. Primary metric: test mIoU. All models share the same 62-image test set, ROI masks and ignore convention解説: 共通の凍結テストセットにおける全体の性能を示した表です。主要な評価指標はテストmIoU(平均Intersection-over-Union)です。全てのモデルは同じ62枚の画像テストセットで評価されています。最も性能の高いモデル(E5 Deep ensemble SegFormer-B3)は0.818のmIoUを達成しており、最も強力な単一モデル(E2 DeepLabV3+)も0.806と高いスコアを示しています。

最も強力な単一モデルである畳み込みネットワーク(DeepLabV3+)は、最高の性能を発揮したアンサンブルモデルと統計的に区別できないほどでした。また、すでに訓練済みの畳み込みモデルとトランスフォーマーモデルを単純に平均化するだけでも、追加の訓練コストなしで最高のアンサンブルモデルに匹敵する性能を示しました。これは、異なるアーキテクチャを組み合わせる多様性が、同じアーキテクチャを異なるランダムシードで複数回訓練するよりも効果的で、かつ費用がかからないことを示唆しています。

興味深いことに、スラフ組織のセグメンテーションは全てのモデルで一貫して最も困難な課題として残りました。

Table 4
Table 4. Table 4 Per-class overlap and detection on the shared test set. For every model the ranking by class is unchanged: yellow (slough) is the hardest tissue, below red (granulation) and black (necrotic/eschar).解説: 共通テストセットにおけるクラスごとの重複度と検出性能を示した表です。全てのモデルにおいて、クラスによる順位は変わらず、黄色(スラフ)が最も困難な組織であり、次いで赤(肉芽組織)、黒(壊死組織/痂皮)となります。最も高いクラスごとのIoUは、黄色と赤ではDeep ensemble SegFormer-B3が、黒ではDeepLabV3+が達成しています。

これは、スラフ組織が最も断片化されており、領域が小さく、他の組織との境界に位置するピクセルが多いという形態学的特徴に起因すると分析されています。

Figure 11
Figure 11. Fig. 11 Inter-class boundary fraction (left) and fragmentation, i.e. connected components per image (right), per class

これは、モデルの動作とクラスの形態学的特徴との間の予測的な関係性を示しています。

創傷あたりの組織割合を臨床単位に換算した場合、わずかな平均バイアス(±5パーセンテージポイント以内)で予測できましたが、単一画像における一致の限界は広く(約±25~50パーセンテージポイント)、この測定は単一画像の読影よりも集計的および経時的な評価に適していることが示されました。

Table 5
Table 5. Table 5 Per-wound tissue-composition agreement (test set, n = 62 wounds). For each wound the predicted area fraction of each tissue (% of labelled ROI pixels) is compared with the reference annota- tion; the signed error (predicted − reference, percentage points) is解説: テストセット(62創傷)における創傷あたりの組織構成の一致度を示した表です。各創傷について、ラベル付けされたROIピクセルの予測面積割合と参照アノテーションを比較しています。結果は展開されたアンサンブルモデル(E5)と最も強力な単一モデル(E2)について示されており、平均絶対誤差(MAE)、バイアス、95%一致の限界(LoA)が含まれています。スラフ組織の一致の限界が他の組織よりも広いことが示されています。

つまり、時間の経過に伴う創傷の変化を追跡する際に、より信頼性の高い情報を提供できるということです。

このデータセット、分割、および訓練プロトコル内では、強力な階層型アーキテクチャ間の選択は決定的ではありませんでした。単一の強力なモデルは臨床展開のための現実的な選択肢であり、最大限の精度とクラスバランスのためにはアンサンブルが予約されるべきであることが示唆されています。

Figure 5
Figure 5. Fig. 5 How a deep ensemble works. The same architecture is trained several times from different random seeds; at inference the members’ probability maps are averaged, so their uncorrelated errors tend to解説: ディープアンサンブルの仕組みを示しています。同じアーキテクチャが異なるランダムシードから複数回訓練され、推論時にはメンバーの確率マップが平均化されます。これにより、相関のない誤差が相殺され、合意されたシグナルが強化されます。展開されたモデル(E5)は、2つのSegFormer-B3メンバーの予測を平均化します。

研究の限界と今後の展望

本研究は、深層学習を用いた創傷組織の自動セグメンテーションにおいて重要な一歩を踏み出しましたが、いくつかの限界も存在します。まず、使用された画像は公開されているデータセットから取得されたもので、各画像に関連する対象者の人口統計情報、創傷病因、解剖学的部位、肌の色調などのメタデータが含まれていません。このため、コホートをこれらの軸に沿って特徴付けたり層別化したりすることができず、研究結果の外部妥当性(他の集団や設定への適用可能性)や、異なる肌の色調を持つ対象者に対する公平性について議論の余地が残ります。

また、アノテーションプロセスにおいて、クラスター支援型ツールが使用されたため、参照境界が色の一貫性によって区切られています。これはラベルの内部一貫性を検証するものではありますが、手書きで自由な描写が行われたデータとの比較は行われておらず、アノテーションバイアスの可能性は排除できません。さらに、ROI(関心領域)内の未ラベル化ピクセルが約15%存在し、これらは損失計算や評価から除外されています。これらは分類の対象外となる組織(上皮化組織、深部構造、血液など)や、専門家がクラスを確定できなかった曖昧な領域であり、その影響についてはさらなる検討が必要です。

加えて、訓練データセットに同一創傷の類似画像(幾何学的変換されたコピーや異なる時期に撮影された同一創傷)が含まれている可能性が指摘されています。重複排除の監査は行われましたが、完全に依存関係が排除されたわけではないため、テストセットの評価結果が訓練データの情報にわずかに影響されている可能性は否定できません。

これらの限界を踏まえ、今後はより多様な対象者属性を含む大規模なデータセットの構築、アノテーションバイアスの影響を評価するための異なるラベリング手法との比較、未ラベル化領域の扱いに関する詳細な分析、そして同一創傷の経時的画像における独立性の確保などが今後の研究課題として挙げられます。また、単一画像での限界が広いという結果は、自動セグメンテーションの測定値が、特に経時的な創傷治癒の傾向把握に有用である一方で、個々の判断の代わりにするにはさらなる精度向上が必要であることを示唆しています。将来的には、これらの進歩が組み合わさることで、慢性創傷ケアにおけるAI支援評価が、より堅牢で信頼性の高いツールとして臨床現場に導入されることが期待されます。

補足図表

Figure 7

Figure 7
Figure 7. Fig. 7 Wound ROI coverage as a fraction of the image (left) and by split (right)解説: 創傷の関心領域(ROI)が画像全体に占める割合(左)と、訓練、検証、テストの各データ分割におけるROIカバー率(右)を示しています。左のグラフは、創傷ROIが画像ピクセルの平均7.0%、中央値3.0%と、画像のごく一部であることがわかります。右のボックスプロットは、各分割データセットにおけるROIカバー率の分布を示しています。

Figure 8

Figure 8
Figure 8. Fig. 8 Tissue pixel frequency per split (left) and the median frequency class weights used in training (right)

Figure 9

Figure 9
Figure 9. Fig. 9 Per-image tissue composition (left), class presence (centre) and image-level co-occurrence (right)

Figure 10

Figure 10
Figure 10. Fig. 10 Empirical mean colour per class (left) and per-class hue distributions (right)

Figure 12

Figure 12
Figure 12. Fig. 12 Representative test cases: the original photo, the wound ROI (background dimmed) and the colour-coded tissue label map

Figure 14

Figure 14
Figure 14. Fig. 14 E1 (SegFormer-B3) diagnostics. Left: training dynamics (solid = validation, dashed = train; • marks the selected best-val- idation-mIoU epoch). Centre: one-vs-rest ROC on the test set from

Figure 15

Figure 15
Figure 15. Fig. 15 E1 (SegFormer-B3) qualitative test cases. From left within each panel: the original wound photo, the ground truth tissue map, the model’s prediction, and the tissue overlaid on the photo. The

Figure 16

Figure 16
Figure 16. Fig. 16 E2 (DeepLabV3 +) diagnostics. Left: training dynamics (solid = validation, dashed = train; • marks the selected best-val- idation-mIoU epoch). Centre: one-vs-rest ROC on the test set from

Figure 17

Figure 17
Figure 17. Fig. 17 E2 (DeepLabV3 +) qualitative test cases. From left within each panel: the original wound photo, the ground truth tissue map, the model’s prediction, and the tissue overlaid on the photo. The

Figure 18

Figure 18
Figure 18. Fig. 18 E3 (U-Net MiT-B3 + pSCSE) diagnostics. Left: training dynamics (solid = validation, dashed = train; • marks the selected best-validation-mIoU epoch). Centre: one-vs-rest ROC on the test set

Figure 19

Figure 19
Figure 19. Fig. 19 E3 (U-Net MiT-B3 + pSCSE) qualitative test cases. From left within each panel: the original wound photo, the ground truth tissue map, the model’s prediction, and the tissue overlaid on the photo. The

Figure 20

Figure 20
Figure 20. Fig. 20 E4 (ViT-B/16, SETR-PUP) diagnostics. Left: training dynamics (solid = validation, dashed = train; • marks the selected best-validation-mIoU epoch). Centre: one-vs-rest ROC on the test set

Figure 21

Figure 21
Figure 21. Fig. 21 E4 (ViT-B/16, SETR-PUP) qualitative test cases. From left within each panel: the original wound photo, the ground truth tissue map, the model’s prediction, and the tissue overlaid on the photo. The

Figure 22

Figure 22
Figure 22. Fig. 22 E5 (deep ensemble) per-member training dynamics of the two seeds (42 and 1234): validation mIoU on the raw weights (solid), training mIoU (dashed) and validation mIoU on the EMA weights (green); • marks the selected best-validation epoch. Both members

Figure 23

Figure 23
Figure 23. Fig. 23 E5 (deep ensemble) test diagnostics. Left: one-vs-rest ROC from the per-pixel probabilities (flip-TTA); AUC red 0.967, yellow 0.931, black 0.985 (micro-average 0.964); slough (yellow) is the low-

Figure 24

Figure 24
Figure 24. Fig. 24 E5 (deep ensemble) qualitative test cases. From left within each panel: the original wound photo, the ground truth tissue map, the model’s prediction, and the tissue overlaid on the photo. The

Figure 25

Figure 25
Figure 25. Fig. 25 How the cross-architecture ensemble (E6) works. Three already-trained, architecturally distinct single models, a convolu- tional network (DeepLabV3 +, green) and two Mix-Transformer models (SegFormer-B3 and the U-Net-pSCSE hybrid, blue), process the photo; their flip-TTA probability maps are averaged post hoc,

Figure 26

Figure 26
Figure 26. Fig. 26 E6 (cross-architecture ensemble) test diagnostics. Left: one- vs-rest ROC from the per-pixel probabilities (flip-TTA); AUC red 0.989, yellow 0.982, black 0.992 (micro-average 0.986). Right: row- normalised confusion matrix (diagonal = per-class recall). Averaging

Figure 27

Figure 27
Figure 27. Fig. 27 E6 (cross-architecture ensemble) qualitative test cases. From left within each panel: the original wound photo, the ground truth tis- sue map, the model’s prediction, and the tissue overlaid on the photo.

Figure 28

Figure 28
Figure 28. Fig. 28 Overall test-set mIoU and mDice per experiment, on one frozen test set identical for every model (E5 highlighted). All models lie within 0.748–0.818 mIoU; the deep ensemble leads narrowly

Figure 29

Figure 29
Figure 29. Fig. 29 Validation vs. test mIoU. Test exceeds validation by a fairly uniform + 0.10–0.20 for every model: the held-out test partition appears easier than the (necrosis-heavy) validation partition and addi- tionally benefits from flip-TTA. Because the split is identical for all models, this shared offset cannot bias the relative cross-model rank-

Figure 30

Figure 30
Figure 30. Fig. 30 Two routes to an ensemble. Mean IoU (dark) and slough (yellow) IoU (light) on the shared test set for the four single mod- els (E1–E4), the seed-diversity deep ensemble (E5) and the post-hoc

Figure 31

Figure 31
Figure 31. Fig. 31 Subset ablation of the cross-architecture ensemble. Test mIoU of every subset of the three ­5122 single models (single = grey, pair = blue, all three = green). Dashed line: best single model; dotted line: the E5 deep ensemble. The principled, selection-free three-way

Figure 32

Figure 32
Figure 32. Fig. 32 Member diversity on the test set. Left: pairwise prediction disagreement (fraction of valid pixels where two members’ arg-max labels differ). Right: pairwise Pearson correlation of the members’ per-pixel error indicators. The two MiT-B3 models (U-Net, Seg-

Figure 33

Figure 33
Figure 33. Fig. 33 Per-class IoU (left) and recall (right). Yellow is the weakest class for every model but is now well above 0.6 IoU; the deep ensemble (E5) and U-Net-pSCSE (E3) handle it best

Figure 34

Figure 34
Figure 34. Fig. 34 Row-normalised confusion matrices (diagonal = per-class recall). The residual error is the symmetric yellow ↔ red and yellow ↔ black confusion: ~ 15–18% of true yellow pixels are still assigned to a neighbouring tissue. E5 has the tightest diagonal

Figure 35

Figure 35
Figure 35. Fig. 35 Per-wound tissue-composition agreement (Bland–Altman). For every test wound (n = 62) the predicted minus reference area frac- tion of each tissue (percentage points) is plotted against their mean, for the strongest single model (E2, top row) and the deployed ensem- ble (E5, bottom row). Solid line: mean (bias); dashed lines: 95% lim-

Figure 36

Figure 36
Figure 36. Fig. 36 Per-epoch mIoU and loss (E1–E4). Solid = validation, dashed = train, • = selected (best-val) epoch. Validation now climbs to a stable pla- teau over many epochs rather than collapsing early

Figure 38

Figure 38
Figure 38. Fig. 38 The same four test wounds, shown (left to right) as the origi- nal photo, the ground truth, every model’s prediction, and the final deep-ensemble tissue overlay on the photo. Colours: red = granu- lation, yellow = slough, black = necrotic/eschar, grey = outside the wound ROI (ignored). All models now agree closely on the domi-

用語集

  • 創傷底: 創傷の表面部分で、肉芽組織、スラフ、壊死組織などから構成され、治癒状態を示す重要な指標です。
  • 肉芽組織: 健康で血管に富んだ結合組織で、創傷治癒の増殖期に見られる、治癒が順調に進んでいる兆候です。
  • スラフ: 線維素、滲出液、死細胞などからなる、柔らかく生命を失った組織。治癒を妨げ、炎症を維持し、細菌の温床となる可能性があります。
  • 壊死組織: 死んだ組織で、しばしば硬く、治癒の物理的障壁となります。除去が必要な場合が多いです。
  • デブリードマン: 創傷床からスラフや壊死組織などの生命を失った組織を除去する処置です。
  • 慢性創傷: 長期間にわたって治癒が滞る、または治癒しない創傷。糖尿病性足潰瘍、静脈性下腿潰瘍、褥瘡などが含まれます。
  • 深層学習: 多層のニューラルネットワークを用いて、データから直接特徴を学習する機械学習の一分野です。
  • セマンティックセグメンテーション: 画像内のピクセル一つ一つにクラスラベルを割り当て、各対象物の正確な境界を識別するコンピュータービジョン技術です。
  • 畳み込みニューラルネットワーク (CNNs): 畳み込み層を主要な構成要素とする深層学習モデル。画像内の局所的なパターンを効率的に捉えるのに優れています。
  • トランスフォーマー: セルフアテンションメカニズムを基盤とする深層学習モデルで、画像内の長距離の依存関係やグローバルな文脈を捉えるのに有効です。
  • U-Net: バイオメディカル画像セグメンテーションで広く用いられるCNNアーキテクチャ。エンコーダー・デコーダー構造とスキップ接続が特徴です。
  • DeepLabV3+: アトラス畳み込みとアトラス空間ピラミッドプーリングを用いて、複数のスケールで文脈情報を集約するセグメンテーションモデルです。
  • SegFormer: 階層型Mix-Transformerエンコーダーと軽量な全MLPデコーダーを組み合わせたトランスフォーマーベースのセグメンテーションモデルです。
  • Vision Transformer (ViT): 画像をパッチに分割し、それをシーケンスとしてトランスフォーマーエンコーダーに入力する、画像認識のためのトランスフォーマーモデルです。
  • アンサンブル学習: 複数の学習モデルの予測を結合することで、単一モデルよりも高い精度とロバスト性を実現する機械学習手法です。
  • ImageNet: 100万枚以上の自然画像が1000以上のカテゴリに分類された大規模な画像データベースです。
  • 転移学習: あるタスクで学習済みのモデル(特にImageNetなどで事前学習されたモデル)を、別の関連するタスクに適用し、ファインチューニングする手法です。
  • IoU (Intersection-over-Union): セグメンテーション性能を評価する指標の一つで、予測領域と正解領域の重なり(共通部分)を、両領域の結合(和集合)で割った値です。高いほど高精度です。
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発行 Beyond the Pixel 編集部(Visionary Imaging Services, Inc.)

編集責任者 小林 達明(診療放射線技師/博士(情報学)) ORCID

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