SimVascularとOpenFOAMで検証!心血管CFDシミュレーションの精度と課題

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解説対象論文: Vascular flow simulations using SimVascular and OpenFOAM
medRxiv|被引用数: 5(2026年9月13日時点)

心血管疾患の診断と治療において、非侵襲的な対象者特異的情報を提供する計算流体力学(CFD)技術の応用が進んでいます。本研究では、オープンソースの2つのソフトウェア「SimVascular」と「OpenFOAM」を用いて、10歳の大動脈縮窄症の対象者における冠動脈の血流シミュレーションを実施。両者の結果を比較し、その類似点と相違点を詳細に分析しています。この研究は、将来のよりパーソナルな治療計画に向けたCFDシミュレーションの信頼性を高める上で重要な洞察を提供します。

研究サマリー(FINER & PICO)
Feasible実施可能性 既存のオープンソースソフトウェアと公開データを活用しており、計算流体力学の専門知識があれば実行可能です。
Ethical倫理面 非侵襲的な手法のため、対象者へのリスクなく貴重な対象者特異的情報を提供可能であり、倫理的です。
Interesting面白さ 異なるCFDソフトウェアの比較は、心血管シミュレーションの信頼性向上に不可欠な基礎研究であり興味深いです。
Novel新規性 2つの主要なオープンソースCFDソフトウェアの比較分析は、その信頼性と限界を明らかにする上で新規性があります。
Relevant切実さ 対象者特異的な心血管疾患治療計画の最適化に役立つ可能性があり、臨床的関連性が高いです。
Measurable測定可能性 血流速度、圧力、流量、渦度、壁面せん断応力など、具体的な血行動態パラメータを比較測定しています。
Modifiable派生・改善 シミュレーションパラメータ(メッシュ、境界条件、流体特性モデル)を調整して結果を検証しており、修正可能です。
Structured文章構造 研究は、幾何形状、メッシュ、境界条件、ソルバー設定について詳細に記述されており、構造化されています。
PICO / PECO対象・介入・比較・結果 P: 大動脈縮窄症の10歳対象者モデル、I: SimVascularによる血流シミュレーション、C: OpenFOAMによる血流シミュレーション、O: 血流パターン、圧力、流量、WSS、渦度の比較。

はじめに:心血管CFDシミュレーションの重要性

どうも、Beyond the Pixelです。近年、計算流体力学(CFD)は、心血管疾患の診断と治療を支援する研究分野で注目を集めています。これは、侵襲性の高い手技に伴うリスクなしに、対象者特異的な貴重な情報を提供できるためです。CFDは熱、物質、運動量伝達のモデリングにおける確立された技術であり、航空宇宙、自動車、そしてバイオメディカル工学など多くの分野で応用されています。特に、心臓病学におけるCFDシミュレーションは、危険な侵襲的測定技術の必要性をなくすだけでなく、壁面せん断応力(WSS)など、直接測定できない特定の血行動態パラメータを測定できるため、広範囲にわたって研究が進められています。これは、一般的な集団に対する治療計画ではなく、個々のケースに合わせた、より個別化された治療へと繋がる重要なステップです。これらのシミュレーションを実行するために、「SimVascular」と「OpenFOAM」という2つの主要なオープンソースソフトウェアが利用されています。SimVascularは、医療画像データから血流シミュレーションを効率的に実行できる心臓病学に特化したソフトウェアです。一方、OpenFOAMは、様々な流体力学現象を多目的にモデリングできる、実績のあるCFDソフトウェアです。異なるCFDソフトウェアを使用する場合、最終結果が非常に類似していることが重要です。なぜなら、治療戦略の計画は、シミュレーションが一貫していて信頼できる場合にのみ支援され得るからです。本研究では、これら2つのソフトウェア間での結果の比較を通じて、CFDソフトウェアがシミュレーション結果に与える影響をより深く理解することを目指しています。

モデルセットアップ:SimVascularとOpenFOAMの比較

本研究では、OSMSC(Open Source Medical Software Corporation)の心血管および肺モデルリポジトリのデータを使用しています。具体的には、大動脈縮窄症(大動脈の狭窄)を持つ10歳の対象者が、狭窄部前後の大動脈を接続するために側々吻合手術を受けた後の、大動脈とその周辺血管のデータが用いられました。これにより、狭窄部の先に十分な血流を確保することを目的としています。

Figure 1
Figure 1. Figure 1: Labeled arteries and associated faces. Cross-sectional areas are provided in Table 2解説: 大動脈モデルにラベル付けされた動脈と関連する面を示しています。表2で各面の断面積が提供されています。

SimVascularとOpenFOAMのシミュレーションは、可能な限り同一の条件で設定されました。例えば、血管の幾何形状、メッシュ、壁面境界条件、および入口での流量は同一です。ただし、数値アルゴリズム、圧力境界条件、流体特性モデルなど、本質的な違いも存在します。幾何形状については、対象者の大動脈モデルの3D幾何形状は、以前の研究から直接採用されました。この幾何形状はSimVascularにインポートされ、全体的な最大エッジサイズ0.1 cmでメッシュ化され、その結果、118950個のノードと669813個のセルを持つメッシュが作成されました。

Figure 2
Figure 2. Figure 2: Mesh of the artery解説: 大動脈のメッシュを示しています。全体的な最大エッジサイズ0.1 cmでメッシュ化され、118950個のノードと669813個のセルで構成されています。

このメッシュはSimVascularからエクスポートされ、OpenFOAMと互換性のある形式に変換されました。SimVascularがcgs単位系を使用するのに対し、OpenFOAMはSI単位系を使用するため、メッシュは0.01倍にスケールされました。全体積は4.337 × 10^-5 m^3、表面積は1.556 × 10^-2 m^2でした。

Table 1
Table 1. Table 1: Total Dimensions解説: 大動脈モデル全体の体積と表面積の総寸法を示しています。

また、様々な出入口の断面積も考慮されました。

Table 2
Table 2. Table 2: Cross Sectional Areas of Inlets and Out- lets.解説: 大動脈モデルの入口および出口における各面の断面積を一覧にしたものです。

壁面は両ソフトウェアで剛体表面としてモデル化され、血管壁には滑りなし境界条件が適用されました。流体特性については、SimVascularでは血液密度1.06g/cm³、粘度0.04g/(cm・s)がデフォルトとして設定されました。一方、OpenFOAMでは、非ニュートン流体である血液のBird-Carreauモデルに基づいて、せん断応力速度の関数として動粘度が変化するモデルが使用されました。入口境界条件として、血流の1周期分の流量データが両シミュレーションに3周期分適用されました。

Figure 3
Figure 3. Figure 3: Graph of inlet boundary condition: In- let volumetric flow rate over time解説: 入口境界条件のグラフで、経時的な体積流量を示しています。このデータはSimVascularとOpenFOAMの両方に適用されました。

これは両者で同一です。出口境界条件については、SimVascularでは抵抗-容量-抵抗(RCR)モデルがすべての出口に適用されました。RCRモデルは、下流の抵抗による出口境界での圧力変動をシミュレートし、血管壁の拡張・収縮による血流調節効果も考慮します。SimVascularから得られたこれらの出口圧力値は、OpenFOAMに境界条件として適用されました。

Table 3
Table 3. Table 3: RCR values employed in SimVascular in cgs units解説: SimVascularで用いられた抵抗-容量-抵抗(RCR)モデルの値をcgs単位で示したものです。

どちらのソフトウェアも非圧縮性粘性流体の支配方程式を解きますが、そのアプローチは異なります。SimVascularは有限要素法を用い、OpenFOAMは有限体積法を用います。どちらも血管壁付近の血流特性を詳細に解析するために、適応メッシュで機能するように設計されています。本研究では、両ソフトウェアで乱流計算は無効にされています。

シミュレーション結果:類似点と相違点

シミュレーションの最初の0.25秒間では、SimVascularとOpenFOAMは多くの点で類似した結果を示しました。圧力: 出口圧力境界条件と流入流量境界条件が同一であるため、シミュレーションされた入口圧力パターンは両ソフトウェア間で非常によく一致しました。

Figure 4
Figure 4. Figure 4: On the left: Simulated inlet pressure in SimVascular and OpenFOAM. The pressure pattern over time agrees well. On the right: Pressure values at the outlet in SimVascular and OpenFOAM. The pressure boundary condition at the outlet in OpenFOAM is prescribed from the simulated result from SimVascular, so the values match as expected.解説: 左側はSimVascularとOpenFOAMでシミュレーションされた入口圧力を示しており、経時的な圧力パターンはよく一致しています。右側は出口での圧力値を比較しており、OpenFOAMの出口圧力境界条件がSimVascularのシミュレーション結果から設定されたため、値は期待通り一致しています。

流量: 総流入量と総流出量も完全に一致しました。これは、両ソフトウェアが非圧縮性流体ソルバーを使用し、同一の流入流量境界条件を持つため、予測された結果です。個々の出口での流量も最初の0.25秒間は合理的に一致していました。

Figure 5
Figure 5. Figure 5: On the left: Flow rate at the outlet computed by SimVascular and OpenFOAM. On the right: Total flow rate at the outlets computed by SimVascular and OpenFOAM. The total outflow rate is the sum of outflow rates at all the outlets. The total outflow rate is compared with the flow rate at the inlet. The OpenFOAM outlet flow rate is identical to the inlet flow rate and the two curves are exactly superimposed.解説: 左側はSimVascularとOpenFOAMで計算された出口での流量を示しています。右側は総流入量と総流出量を比較しており、OpenFOAMの総流出量は流入量とほぼ同じであり、両曲線は完全に重なっています。
Figure 6
Figure 6. Figure 6: On the left: SimVascular simulated flow rates the outlets. On the right: OpenFOAM simulated flow rates at the outlets.解説: 左側はSimVascularでシミュレーションされた各出口での流量を、右側はOpenFOAMでシミュレーションされた各出口での流量を比較しています。

速度: 両ソフトウェアで同様の速度マグニチュードが観測されました。OpenFOAMでは、ソルバーの安定性を維持するために7 m/sの速度リミッターを適用する必要がありました。速度リミッターなしでは、OpenFOAMがモデル化した最大速度が不合理な値に増加し、計算が停止する原因となります。ストリームラインで可視化された0.07秒時点での速度パターンと値は、両者間で良好な一致を示しました。

Figure 7
Figure 7. Figure 7: On the left: Velocity results from SimVascular at 0.07 seconds. On the right: Velocity results from OpenFOAM at 0.07 seconds. 0.07 seconds is chosen for the time to display results because it is when inflow rate is at the maximum. Note both color scales are identical, and all velocities are shown in m/s.解説: 0.07秒時点でのSimVascular(左)とOpenFOAM(右)の速度結果をストリームラインで可視化したものです。流入流量が最大になるこの時点での速度値と流れのパターンは良好な一致を示しています。

壁面せん断応力(WSS): WSSの定性的なパターンは類似していましたが、値は大きく異なりました。OpenFOAMでのWSSは、SimVascularで計算された値よりも約1桁高くなっています。この違いは、OpenFOAMで非ニュートン流体モデルが使用されたことに起因すると考えられます。

Figure 8
Figure 8. Figure 8: On the left: SimVascular WSS results at 0.07 seconds. On the right: OpenFOAM WSS results at 0.07 seconds. Similar qualitative patterns are observed with the WSS, but values are very different. Note the color scales are different due to drastically different values.解説: 0.07秒時点でのSimVascular(左)とOpenFOAM(右)の壁面せん断応力(WSS)結果を比較しています。定性的なパターンは類似していますが、値は大きく異なっています。カラースケールも大きく異なっています。

渦度: 渦度についても定性的な結果は類似していましたが、値にはわずかな違いが見られました。各タイムステップの平均渦度は非常によく一致していました。

Figure 9
Figure 9. Figure 9: On the left: Vorticity results from SimVascular at 0.07 seconds. On the right: Vorticity results from OpenFOAM at 0.07 seconds. Similar qualitative results are shown, but values differ slightly. Color scales of both images are the same from 0 to 8700 1/s.解説: 0.07秒時点でのSimVascular(左)とOpenFOAM(右)の渦度結果を示しています。定性的な結果は類似していますが、値はわずかに異なります。両画像ともにカラースケールは0から8700 1/sで同一です。

考察と今後の展望:シミュレーションの課題と改善点

本研究では、SimVascularとOpenFOAMを用いた血流シミュレーションにおいて、初期の0.25秒間においては、壁面せん断応力(WSS)を除き、驚くほど良好な一致が見られました。WSSの相違は、両ソフトウェアで採用された流体特性モデル(ニュートン流体と非ニュートン流体)の違いに起因すると考えられます。しかし、0.25秒以降のシミュレーション結果では、いくつかの顕著な不一致も明らかになりました。1. 出口圧力の逆転: OpenFOAMのいくつかの出口では、境界条件として設定されたはずの圧力がシミュレーション中に逆転するという予期せぬ現象が発生しました。これは、流入流量がほぼゼロになる約0.25秒時点で最初に確認されました。この圧力逆転は、0.25秒以降に頸動脈や上腕動脈などで不自然な流入を引き起こす原因となっていました。この原因についてはさらなる調査が必要です。2. 圧力の周期的増加: SimVascularでシミュレーションされた圧力値は、流入流量が周期的なにもかかわらず、各周期で着実に増加する傾向を示しました。これは入口と出口の両方で見られ、OpenFOAMの出口圧力も境界条件としてSimVascularのデータを使用したため同様の増加を示しましたが、OpenFOAMの計算された入口圧力はSimVascularのように増加しませんでした。このような圧力の不自然な増加は、長期的には非現実的な値につながるため、SimVascularにおける原因の特定が必要です。3. WSSのモデル化: WSSの大きな違いは、流体粘度モデルの違いに起因する可能性が高いです。この仮説を検証するためには、両ソルバーで同一のニュートン流体のせん断応力モデルを実装し、WSSの結果を再検証することが有用であると考えられます。4. OpenFOAMの数値不安定性: OpenFOAMでは、数値的な不安定性を回避するために速度リミッターを適用する必要がありました。速度リミッターがない場合の不安定性の原因は不明であり、今後の検討課題です。5. 乱流モデリング: シミュレーションで使用された速度、粘度、長さのスケールを考慮すると、血流の乱流モデリングを有効にすることが適切です。しかし、SimVascularで乱流モデリングのサポートが不足しているため、本研究では両ソルバーともに層流のみを考慮しました。OpenFOAMで乱流を有効にし、その結果をSimVascularと比較することは興味深い今後の研究課題となるでしょう。これらの結果の一致は、血行動態モデリングにおけるこれらのツールの使用に自信を与えます。同時に、この予備的研究によって明らかになった多くの未解決の疑問は、今後の研究でより良く解決される可能性があります。

補足図表

Figure 10

Figure 10
Figure 10. Figure 10: Mean vorticity calculated by both SimVascular and OpenFOAM are shown over time. The values are reasonably similar.

Figure 11

Figure 11
Figure 11. Figure 11: Carotid pressures over time in Sim- Vascular and OpenFOAM are shown. Note that the pressure in SimVascular is inputted as the pressure boundary condition in OpenFOAM. At around 0.25 seconds, the OpenFOAM pressure is essentially a mirror image of the prescribed boundary conditions.

Figure 12

Figure 12
Figure 12. Figure 12: Glyph of velocity at 0.7 seconds. There is clearly significant inflow in the Btrunk face, which is very unexpected.

Figure 13

Figure 13
Figure 13. Figure 13: On the left: SimVascular simulated flow rates the outlets. On the right: OpenFOAM simulated flow rates at the outlets. Clearly, there is inflow at unexpected faces at times after 0.25 seconds in the OpenFOAM simulation.

Figure 14

Figure 14
Figure 14. Figure 14: Pressure values simulated in SimVascular over three periods of inlet flow. Both pressures in SimVascular increase every period. The OpenFOAM outlet pressure also increases every period, as prescribed by the boundary condition. However, the calculated inlet flow in OpenFOAM does not increase like that of SimVascular does.

用語集

  • 計算流体力学(CFD): 流体の流れ、熱伝達、物質移動などをコンピュータシミュレーションで解析する技術。
  • SimVascular: 医療画像データから血流シミュレーションを行うためのオープンソースソフトウェア。心臓血管に特化しています。
  • OpenFOAM: 多様な流体力学現象をモデリングできる、汎用性の高いオープンソースCFDソフトウェア。
  • 大動脈縮窄症(CoA): 大動脈が部分的に狭くなる先天性の心疾患。
  • 側々吻合: 血管などの2つの管状構造を、その側面同士を接続するように手術で繋ぐ方法。
  • 壁面せん断応力(WSS): 血管の内壁に沿って血流が及ぼす摩擦力。動脈硬化の発生・進行に関連すると考えられています。
  • 有限要素法: 連続体を小さな要素(有限要素)に分割し、それぞれの要素内で物理法則を近似的に解く数値解析手法。
  • 有限体積法: 計算領域を小さな制御体積(有限体積)に分割し、各体積内で保存則(質量、運動量など)を満足させる数値解析手法。
  • ニュートン流体: 粘度がせん断応力速度に依存せず一定である理想的な流体。
  • 非ニュートン流体: 粘度がせん断応力速度によって変化する流体。血液がその一例です。
  • 抵抗-容量-抵抗(RCR)モデル: 血管系の末梢抵抗と血管壁の弾性(容量)をモデル化し、出口での圧力応答をシミュレートするための回路モデル。
  • 渦度: 流体の回転の度合いを表す物理量。血流の複雑な流れパターンを分析する際に用いられます。
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免責事項

発行 Beyond the Pixel 編集部(Visionary Imaging Services, Inc.)

編集責任者 小林 達明(診療放射線技師/博士(情報学)) ORCID

本記事は生成 AI を用いて作成しています。公開後に気づいた誤りは編集部が随時修正します。

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