2D-Phase Contrast CMR:小児循環器の血流動態を非侵襲で測る最先端技術

· 論文解説

🎧 この記事を音声で聴く(AI生成Podcast)

解説対象論文: Blood Flow and 2D-Phase Contrast CMR
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery|被引用数: 0(2026年9月15日時点)

心臓大血管MRI(CMR)は、非造影・非被曝・非侵襲という特徴から、特に繰り返し検査が必要な小児循環器領域で非常に有用な画像診断法です。その中でも、2D-Phase Contrast(2D-PC)CMRは、他のモダリティでは不可能な「任意の関心領域の血流量を定量的に計測する」という独自の機能を持っています。この記事では、この画期的な技術の基本原理、実際の撮影方法、そして幅広い臨床応用について、専門家の視点から分かりやすく解説し、その可能性を探ります。

研究サマリー(FINER & PICO)
Feasible実施可能性 心臓MRI装置が広く普及しており、特別な追加設備なく血流評価が可能です。
Ethical倫理面 非侵襲的で非被曝であるため、小児を含む対象者に繰り返し安全に適用可能です。
Interesting面白さ 他のモダリティでは困難な、任意の関心領域の血流量を定量できる独自の機能を有します。
Novel新規性 1980年代以降確立された技術ですが、継続的な研究と応用により診断精度が向上しています。
Relevant切実さ 小児先天性心疾患の診断や治療方針決定において、血行動態の詳細な解析に不可欠です。
Measurable測定可能性 心拍出量、逆流量、シャント血流量など、詳細な血行動態パラメータを定量的に計測します。
Modifiable派生・改善 VENCや時間・空間分解能などの撮影設定を調整することで、対象者の状態に柔軟に対応できます。
Structured文章構造 撮影プロトコル(例:FLOW-11)や解析手法が標準化されており、高信頼性のデータが得られます。
PICO / PECO対象・介入・比較・結果 小児循環器対象者における2D-Phase Contrast CMRによる血流動態評価の有効性と臨床応用。

はじめに:なぜ2D-Phase Contrast CMRが重要なのか?

どうも、Beyond the Pixelです。心臓大血管MRI(CMR)は、造影剤を使わず、放射線被曝もなく、体への負担が少ない非侵侵襲的な検査法です。そのため、時間経過とともに繰り返し撮影が可能であり、特に成長するにつれて超音波検査での観察が難しくなる小児循環器の分野において、非常に適した検査であると言えます。CMRには様々な撮影方法がありますが、その中でも「2D-Phase Contrast(2D-PC) CMR」は、他の画像診断法にはない、特定の関心領域における血流量を定量的に計測できるという独自の機能を持っています。本記事では、この2D-PC CMRの基本原理から実際の撮影、そして幅広い臨床応用について、分かりやすく解説します。

2D-PC CMRの基本原理と歴史

循環器系の根本的な役割は、臓器への酸素と栄養の運搬、そして組織の血流維持です。これらの機能が適切に作動しているかを判断するためには、心拍出量や体血圧、中心静脈圧、酸素飽和度といった指標が頻繁に用いられます。2D-PC CMRは、心臓や血管の血流を評価するために広く用いられる非侵襲的な画像診断法です。その基本的な原理は、双極性のVelocity encoding gradient(血流の速度をMR信号の位相情報に変換するための磁場勾配)を用いて、血液の速度を磁気共鳴(MR)信号の位相に置き換えるものです。これにより、ボクセル(画像の最小単位)ごとの速度情報が得られ、これを断面積と時間で積分することで血流量が算出されます。この技術により、心拍出量、逆流量、シャント血流量、臓器血流など、循環評価に不可欠な詳細な血行動態を網羅的に計測し、病態解析や治療方針の決定に役立てることができます。心室機能を詳細に評価するcine MRと組み合わせることで、より精確な血行動態評価が可能となります。

2D-PC CMRの歴史は、核磁気共鳴(NMR)の発見直後の1940年代後半に、NMR信号が対象の動きに影響されることが観察されたことに始まります。1970年代に磁気共鳴画像法(MRI)が発見された後、1980年代初頭には流れる血液が画像化されるようになりました。その後、心電図と同期した時間分解Cardiovascular Magnetic Resonance Imaging (cine CMR)がVelocity encoding技術と組み合わされ、血流の時間分解画像が得られるようになります。「位相コントラスト(PC)」という用語は、撮影対象の速度をMR信号の位相に置き換える技術を指し、1980年代以降、血流の定量に広く使用され、現在ではすべてのCMRシステムに搭載されています。

2D-PC法で撮影すると、

Figure 1
Figure 1. Fig. 1 2D-PC CMR image set解説: 2D-PC CMR画像セットを示します。左のMagnitude画像は、心臓や血管の構造的特性を信号強度(明るさ)で表現したもので、右のPhase Contrast画像は、血液の動きをCMR信号の位相情報に変換して描出したものです。

に示すように、Magnitude画像とPC画像の2種類の画像が得られます。Magnitude画像は、心臓や血管などの構造特性を信号強度(明るさ)の強弱で表現したcine画像です。一方、Phase Contrast画像は、双極性のVelocity encoding gradientを用いて、血液の動きをCMR信号の位相情報に変換して描出した画像です。PC画像の信号強度は、血流速度に対応する位相(-πからπまでの値)で表されます。この撮影方法では、血液の動きは単一の方向に限定され、その方向にVelocity encoding gradientが適用されます。

2D-PC CMRの撮影:実践と課題

実臨床で最も広く使われるのは、単一方向のVelocity encodingを用いた2D-PC CMRです。拍動流を時間分解して計測するため、データは複数の心拍周期にわたって取得されます。単一画像フレームのデータ取得には通常240ミリ秒以上が必要で、複数の心拍から同じタイムフレームのデータを収集し、演算処理によって再構築されます。これにより、心周期全体にわたる血流速度を表示した一連の動画像が生成され、実際の断面の流れのパターンを白黒の濃淡で視認でき、また流量測定が可能となります。

2D-PC CMRの撮影には、スキャン時間と空間的・時間的解像度の間でトレードオフが存在します。考慮すべき設定項目は以下の通りです。
* スキャン時間(Tacq): 息止め撮影では、対象者が息を止める時間より短くする必要があります。息止めが難しい小児対象者などでは、自由呼吸下で撮影するため厳しい時間制限は不要ですが、鎮静時間の短縮のため、画質が担保される最短時間に設定することが望ましいです。加算回数を増やせば呼吸運動によるアーチファクトは減少しますが、スキャン時間は延長します。
* k-space lines(Ny): 画像を構成するために収集する生データラインの数で、空間的解像度に関与します。FoV(視野)が固定されている場合、この数を増やすとスキャン時間は延長しますが、空間解像度が向上します。
* Segments(NSeg): 各心拍中に収集されるデータラインの数です。総スキャン時間Tacqは「RR time × Ny / NSeg」で計算され、k-space segment数が増えるとTacqは短縮されますが、時間分解能は低下します。
* 心拍タイムフレーム(Nphs): 心周期内のタイムフレーム数(1心拍の分割数)を指します。1つのタイムフレームの持続時間は、スキャンの時間分解能(Δt)で与えられます。単一方向Velocity encodingによるPhase Contrast画像を生成するために必要な2つのスキャンが考慮されるため、Δtは「2 × TR × NSeg」となります。一定の繰り返し時間(TR)および心拍周期に対して、時間分解能、空間分解能、総取得時間の間でトレードオフを考慮して、異なるイメージングプロトコルを構築する必要があります。一般的に、空間分解能1.5〜2.5 mm、時間分解能30〜60 ms、スライス厚5〜8 mmのパラメータ設定により、10〜20秒の呼吸保持中に2D-PCデータが取得可能です。対象者の画像診断を行う際には、スキャン時間と空間的・時間的解像度の関係が基本的な考慮事項となります。

速度エンコード感度(VENC)
VENCは、専門家が撮影ごとに設定する重要なパラメータです。これは、双極性Velocity encoding gradientの振幅と持続時間によって定義され、速度エイリアシング(高速な血流が不正確に低速または逆方向として表示される現象)に遭遇することなく取得できる最大流速を表します。血流速度がVENCより大きい場合、速度エイリアシングが発生します。これは通常、

Figure 2
Figure 2. Fig. 2 Differences in images due to differences in VENC解説: VENC(速度エンコード感度)の違いによる画像の差を示します。VENCが150 cm/s(上段)の場合に速度エイリアシング(血流が不正確に表現される現象)が発生しているのに対し、VENCを250 cm/s(下段)に上げるとエイリアシングが解消され、より正確な血流情報が得られることが示されています。

に示すように、正から負、または負から正の速度への急激な変化として描出されます(流れの反転アーチファクト)。

アンチエイリアシング補正機能を持つソフトウェアもありますが、機能がない場合や流速が補正範囲外の場合は、速度エイリアシングを避けるためにVENCを増加させて再撮影します。ただし、高いVENCを選択すると速度エイリアシングは減少しますが、流速画像の速度ノイズは増加します。理想的には、エイリアシングを回避するために必要なだけ高いVENCを選択すべきですが、速度ノイズを減少させるためには可能な限りVENCを低く保つ必要があります。血流が遅い場合(例:静脈循環や遅い拡張期中)は、VENCを減少させて低い流速を正しく評価する必要があります。

Figure 3
Figure 3. Fig. 3 Differences in flow volume curves due to differences in解説: VENC(速度エンコード感度)の違いによる流量曲線への影響を示します。上段はVENC 150 cm/sでエイリアシングが発生し、流量曲線に不正確な部分(矢印)が見られますが、下段のVENC 250 cm/sではエイリアシングが解消され、より正確な流量曲線が得られています。

は、VENCの違いによる流量曲線への影響を示しており、不適切なVENC設定が測定誤差につながることを示唆しています。小児においては、成人と比較して血流速度が大きいため、動脈ではVENCを250 cm/s、静脈では150 cm/sと設定することが推奨される場合があります。実臨床では、250 cm/sと150 cm/s、あるいはそれ以上でも大きな計測誤差は生じにくく、エイリアシングを回避することの方が重要だと考えられています。

速度エンコード方向(Flow-encoding direction)
CMRスキャナーは3つの直交磁場勾配(x, y, z)を備えており、目的の流れ方向に沿って双極性Velocity encoding gradientを切り替えることで、任意の方向に速度をエンコードできます。心拍出量や逆流量の計測を必要とするアプリケーションでは、フローエンコード方向と直交する方向(through-plane)に画像を設定します。

心拍ゲーティングと同期
2D-PC CMRのデータ取得には心拍ゲーティングが必要です。これにはプロスペクティブゲーティングとレトロスペクティブゲーティングの2つがあり、それぞれ利点と欠点があります。いずれも生理的モニタリング装置(ECGのR波検知が一般的)が連続的に心拍を検知します。
* プロスペクティブゲーティング: 心拍のタイムフレーム数が事前に決定され、R波から次のR波までのデータが収集されます。スキャンがRR間隔の80~90%に限定されるため、心拍が不整でも収縮期の重要な血流部分を均一な時間分解能で収集できます。しかし、スキャン範囲が限定されるため、拡張末期前後の血流データ(肺動脈弁逆流や房室弁、静脈血流の重要な部分)を取得できない可能性があります。
* レトロスペクティブゲーティング: RR間隔100%のデータが連続的に収集され、心拍タイムフレーム数と時間分解能の関係が解除されます。ユーザーが心拍タイムフレーム数を設定すると、1心拍が設定したコマ数を持つ動画として撮影されます。これにより、真に極めて高い時間分解能を達成できる可能性があります。しかし、RR間隔の変動に対処できず、不整脈のある対象者では有効な1心拍あたりの流量が計測できない欠点があります。

2D-PC CMRの解析と後処理

対象血管に直交する断面で撮影された2D-PC画像を用いて、血流量、逆流量、最大流速などを定量します。血流は血管断面積と、それを通過する単位時間あたりの総血液量から定量化されます。具体的には、流速を血管断面積で積分したものに比例する流量が得られ、総血流量は1心拍周期にわたって積分された流量となります。

撮像平面が血管に完全に直交していない場合でも、血管が円筒形構造であれば、断面積の増加と血流速度の減少が相殺され、顕著な流量変化は生じにくいとされます。しかし、円筒形ではない血管や細い血管では、血流と静止した背景組織の両方を含むボクセル(画像の最小単位)が存在し、流量を過小評価する可能性があります(パーシャルボリューム効果)。正確な流量を測定し、この効果を避けるためには、血管内腔を横切る少なくとも5~6ボクセルが必要であると言われています。

バリデーション研究
2D-PC CMRは、他の侵襲的・非侵襲的な血流定量化手法と広く比較検証され、確立された技術として用いられています。初期の検証では、健常成人において、大動脈の1心拍流量とcine MRによる左室1回拍出量が非常に高い相関と精度を持つことが示され、これは小児対象者でも確認されています。ファントム(模倣装置)研究、ドップラー超音波、流体物理学に基づくコンピュータモデルとの比較でも、高い精度と再現性が示されています。臨床的には、小児先天性心疾患におけるQp/Qs(肺血流量と体血流量の比)がFick法と高精度に一致するという報告や、大静脈、肺動脈、肺静脈など局所の血流量が正確に計測できるとされています。

近年、本論文の執筆専門家らは「FLOW-11」と称するプロトコルを開発し、10箇所の血管および心内腔断面の2D-PC撮影から11箇所の血流量測定をルーチンで行っています。これにより、健常小児において大動脈、主肺動脈、全大静脈、左右肺動脈、左右肺静脈、僧帽弁、三尖弁を通過する血流量が一致することが示されました。ただし、2D-PC CMRには空間分解能と時間分解能における限界もあり、適切な撮影条件を設定できないと不正確な定量化につながる可能性があることを認識する必要があります。パーシャルボリューム効果を最小限に抑えるためには、撮像面を血流ベクトルに正確に垂直に向けること、十分な面内分解能(1.2×1.2 mm未満)で撮像すること、スライス厚を6 mm未満で撮像することが有効であるとされていますが、これについては議論の余地もあります。

2D-PC CMRの臨床応用

2D-PC CMRは、様々なガイドラインで小児の心疾患への適用が推奨されています。特に、心内・心外シャント(心臓や血管の異常な交通路)の定量評価や、肺動脈弁逆流を精確に測定できる唯一のモダリティ(診断手段)とされています。左右の肺動脈血流比も計測でき、7:3を超える不均衡は肺動脈分枝への介入必要性を示すカットオフ値とされています。

また、侵襲的なFick法と比較して、Qp(肺血流量)とQs(体血流量)の測定が肺動脈と大動脈の流量評価に限定されないという利点もあります。例えば、肺静脈や大静脈の流量を測定することでもQpとQsを定量化できます。これは特に、大動脈の一部で血流を測定できない場合(例:金属を含む人工弁を持つ対象者で肺動脈が見えにくい場合)や、Fick法では算出不可能なびまん性の体肺側副血行(全身の血管と肺の血管が異常に繋がっている状態)を有するBDG循環、Fontan循環などの対象者で有効です。同一対象者内で複数のQp・Qsを評価し、血行動態を有機的に構築することで、アーチファクト(偽像)が生じやすい乱流部分や拡大した大動脈を有する症例であっても、誤計測を排除し、生理と一致した合理的な解釈を得ることができます。

前述のFLOW-11プロトコルでは、

Figure 4
Figure 4. Fig. 4 Relation between age and AAo strokevolume, MPA stroke volume, SVC flow index, SVC/AAo flow解説: 年齢とAAo(上行大動脈)の1回拍出量、MPA(主肺動脈)の1回拍出量、SVC(上大静脈)フローインデックス、SVC/AAoフロー比の関係を示します。上段の2つのグラフは体表面積(BSA)に対するAAoとMPAの1回拍出量の増加を示し、下段の2つのグラフは年齢に対するSVCフローインデックスおよびSVC/AAoフロー比の低下を示しています。

に示すように、11箇所の血流量に関する小児の正常値が報告されています。どの部位の血流量も年齢に応じて増大しますが、標準化した上大静脈血流や上大静脈血流/大動脈血流量比は年齢とともに低下し、脳血流量が成長に伴い相対的に減少することが示されています。一方、左右肺動脈比や肺静脈血流比は年齢によらず一定とされています。

FLOW-11の撮影と解釈
血流量を計測したい血管の長軸2方向の断面画像から、血管に直交する断面を設定し撮影します。任意断面の信号強度を反映した動画(Magnitude画像)と血流速度を反映した位相差画像の動画(Phase Contrast画像)がセットで得られます。ソフトウェアを用いて個々の血管や弁口を断面上で囲う(ROI: Region of interestの設定)ことで、このROI部分を通過する1心拍分の血流量が順行性、逆行性、差し引きの量として計算・定量されます。

Figure 5
Figure 5. Fig. 5 FLOW-11 measurement sites解説: FLOW-11プロトコルにおける血流測定部位を示した図です。心臓と主要な血管が描かれ、上行大動脈(Ao)から三尖弁(TV)までの11箇所の血流測定サイトが青、赤、紫の線と番号でマークされています。

は、FLOW-11における血流計測部位を示しており、上行大動脈(AAo)、主肺動脈(MPA)、上大静脈(SVC)、下大静脈(IVC)(+下行大動脈(DAo))、左右肺動脈(LPA, RPA)、左右肺静脈(LPV, RPV)、僧帽弁(MV)、三尖弁(TV)の11箇所が標準プロトコールに含まれます。疾患によってはアレンジすることもありますが、これらの10断面が撮影できていれば、一部不明瞭であっても基本的な血行動態を導くことが可能です。

シャントや逆流がない正常パターンでは、体血流は肺血流と一致するため、これらの各部位の血流量はいわゆるCardiac Indexとしてほぼ同一の値となります。シャントにより肺血流量と体血流量が異なる場合、この11箇所の流量計測でシャントの部位と量が特異的に表現されます。2D-PC CMRが最も有用なのは、複数のシャントや左右肺動脈・肺静脈血流・上下半身血流に差があり心室バランスも微妙な、より複雑な血行動態の症例です。

各フロー撮影部位における蓄積される知見
* 上行大動脈(左室流出路、DKS吻合を含め): 心係数に該当し、心機能や心不全の重症度を反映する基本的な指標です。動脈管開存や体肺側副血行などの心外短絡がある場合は、体血流とシャント血流の総和となる点に注意が必要です。大動脈弁逆流(AR)評価にも汎用され、CMRによるAR定量は、手術に至る対象者を高感度・高特異度で予測することが示されています。心エコーで評価が難しい中等度から重度のAR対象者におけるARの定量化と、左室容積・収縮能評価としてCMRが推奨されています。
* 上大静脈、下大静脈、下行大動脈: SVC、DAoはAAoと同一断面で撮影でき、形態も一様で層流(スムーズな流れ)であることが多いため、最も正確に流量が計測できる部位と考えられます。IVCは呼吸性変動が大きくアーチファクトを生じやすいため注意が必要です。SVCとIVCを合わせた流量はAPCA(体肺側副血行)があってもQsを反映し、BDG循環やFontan循環ではAPCAの流量測定にも利用できます。
* 主肺動脈(肺動脈弁)、左右肺動脈: MPA(肺動脈弁)血流量は肺動脈弁逆流評価のゴールデンスタンダードとされています。重度の肺動脈弁逆流を有する症例では右室流出路の拡大が多く、乱流成分が増大し血流量誤差が大きくなる場合があるため、他部位の血流量や容積変化との整合性を検証することが重要です。肺動脈に狭窄部位があると、狭窄以遠は乱流となるため、2D-PCによる評価が困難になる場合があります。
* 左右肺静脈: 左右肺静脈の2D-PCによる血流量測定は古くから行われ、健常例では左右肺動脈血流や心係数との整合性も確認されています。断面の設定がやや難しいですが、撮影さえできればSVCと同様に基本的に層流であり、計測誤差は小さいとされます。左右肺血流が計測困難な症例では、左右肺静脈血流が有用です。
* 僧帽弁(左室流入路)、三尖弁(右室流入路)、共通房室弁(単心室流入路):
* 僧帽弁(MV): 左室流入血流量の測定は正確に可能で、容積計測で求めた1回拍出量との整合性が検証できます。僧帽弁逆流量の直接測定は誤測が生じやすいため、cine MRでの容積測定で求めた左室1回拍出量から2D-PCで測定した大動脈血流を差し引く間接法が用いられます。この方法は、逆流ジェットの流向や数に依存せずに逆流量・率の定量が可能で、再現性が極めて高いとされ、術後のリバースリモデリングや予後を予測できることが判明し、その重要性が高まっています。
* 三尖弁(TV): MVと同様に、右室流入血流量を正確に計測可能で、右室拍出量との整合性を検証できます。三尖弁逆流(TR)も予後に悪影響を及ぼすことが示されており、間接法で計測した逆流量と逆流率の両方が死亡率増加と相関します。
* 共通房室弁(CAVV): 原理的にはどのような房室弁であっても間接法であれば逆流量の計測が可能であり、BDG循環における房室弁逆流の定量報告もあります。

その他の部位・運用
* 脳血流: 2D-PCは任意の血管の血流量を正確に計測できるため、頸動脈に適用して脳血流量を計測することも可能です。加齢に伴う減少や白質病変増大との相関など、多くの研究に用いられています。
* 肝血流: 門脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈、肝動脈、肝静脈など、測定部位は統一されていませんが、Fontan循環における肝血流と病態との比較がなされます。
* ステント: ステントは磁性を有し、2D-PCでもアーチファクトとして描出されます。ナイチノールステントであれば内部血流を計測できるという報告がある一方、材質に関わらずステント内部での計測は過小評価となり、1cm離せば正確に計測できるという報告もあります。ほとんどの場合でステント内部での血流計測は過小評価になると考えられます。
* 運動負荷と2D-PC: 運動負荷CMRは、運動に伴う局所血流量や心機能の変化を定量できる、近年注目される画像診断法です。負荷は仰臥位エルゴメータなどが好まれて用いられます。検査難度が高く時間・空間分解能が臨床で用いる基準に達していなかった時期もありましたが、近年では技術革新により実用に耐える検査となり、Fontan循環やファロー四徴症術後などに適用した報告があります。

まとめ:2D-PC CMRの未来

2D-PC CMRによる血流イメージングは、非侵襲的に人体の循環動態を特徴づける独自のツールです。撮影原理として双極性傾斜磁場を用い、位相情報が速度情報に置き換えられることを理解しておくべきです。また、スキャン時間は空間・時間分解能とのトレードオフがあるため、対象者の体格や病態に応じて、適切な精度の情報を最短時間で収集できるよう設定を工夫することが重要となります。

2D-PC CMRは多様な臨床応用がされていますが、cine MRなど他のプロトコールと組み合わせることで、極めて詳細な病態評価が可能となります。典型的な応用例としては、弁逆流の重症度、心内シャント、右心バイパス循環、そして臓器血流の評価などが挙げられます。4D flowも基本原理は2D-PCと同一であり、三方向の2D-PC画像の再構築によって実現されます。その原理や潜在能力に対し、実用が追いついていない部分もまだ多く、今後さらなる活用が期待される技術です。

用語集

  • CMR: 心臓大血管MRI(Cardiovascular Magnetic Resonance imaging)の略で、心臓と血管を画像化する磁気共鳴画像法です。
  • 2D-Phase Contrast (2D-PC) CMR: 特定の関心領域における血流の速度と流量を非侵襲的に定量測定できる心臓MRIの撮影法です。
  • Velocity encoding gradient: 血流の速度情報をMR信号の位相情報に変換するために用いられる双極性の磁場勾配です。
  • Magnitude画像: 心臓や血管などの構造的な特徴を信号強度(明るさの強弱)で表現した画像です。
  • Phase Contrast画像: 血液の動きをMR信号の位相情報に変換して描出した画像で、血流速度に対応する信号強度を持ちます。
  • VENC: Velocity encoding sensitivityの略で、速度エイリアシングを起こさずに測定できる最大血流速度を設定するパラメータです。
  • エイリアシング: 血流速度がVENC設定値を超えた場合に、実際とは異なる低速または逆方向の血流として画像に描出される現象です。
  • k-space lines: 画像を構成するために収集する必要のある生データラインの数で、空間的解像度に関与します。
  • Segments: 各心拍中に収集されるデータラインの数で、時間分解能やスキャン時間に影響を与えます。
  • 心拍タイムフレーム: 心周期内の画像を分割する数(コマ数)を指し、時間分解能に影響します。
  • プロスペクティブゲーティング: R波を基準に心拍のデータ収集を同期させる方式で、特定の心周期フェーズのデータを安定して取得できます。
  • レトロスペクティブゲーティング: 心拍全体を通じて連続的にデータを収集し、後から心拍周期に合わせて画像を再構築する方式です。
  • パーシャルボリューム効果: 血管が細い場合などに、血流と静止組織の両方が一つのボクセルに含まれることで、流量が過小評価される現象です。
  • ROI: Region of interestの略で、画像上で血流量を計測したい特定の領域を囲んで設定する範囲です。
  • ゴールデンスタンダード: 診断や評価において、最も信頼性が高く、標準的な基準となる方法や技術を指します。
powered by visionary imaging services, inc.
免責事項

発行 Beyond the Pixel 編集部(Visionary Imaging Services, Inc.)

編集責任者 小林 達明(診療放射線技師/博士(情報学)) ORCID

本記事は生成 AI を用いて作成しています。公開後に気づいた誤りは編集部が随時修正します。

論文の引用・解釈の方針は免責事項をご覧ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です