医用画像フォーマットの真実:DICOM、NIfTI、その先のメタデータ | 第2回
医用画像処理の学習において、多様な画像フォーマットを理解することは、解析結果の信頼性を高め、データの適切な取り扱い方を学ぶ上で不可欠です。本記事では、医用画像処理の基礎となるDICOM、そして研究分野で広く使われるNIfTI、さらには一般画像やPDFといった多様なフォーマットについて、GRAPHY-Next v0.2.8の最新機能を通じて深く掘り下げます。特に、NIfTIが抱えるメタデータ管理の課題と、それを補完する「サイドカーJSON」の役割に焦点を当て、フォーマットの違いがもたらす情報量の差、そしてGRAPHY-Nextが全てのデータを内部的にDICOMに一元化する戦略を解説します。常に進化し続けるGRAPHY-Nextの最新版をぜひ活用し、医用画像データとの向き合い方を共に学びましょう。
この回で学ぶこと
- 医用画像フォーマットの主要な種類(DICOM, NIfTI, 一般画像, PDF)とそれぞれの特徴を区別できるようになる。
- NIfTIにおけるメタデータ管理の課題と、それを補完するサイドカーJSONの役割を説明できるようになる。
- GRAPHY-Next v0.2.8が様々な非DICOMデータをどのようにDICOMへ変換・管理するかを理解できるようになる。
- GRAPHY-Next v0.2.8の画面操作を通じて、異なるフォーマットのデータを取り込み、そのタグ情報を確認できるようになる。
- 医用画像データの匿名化と情報喪失の違いを認識できるようになる。
この記事は GRAPHY-Next v0.2.8 の画面で解説しています。 GRAPHY-Next は研究用途のソフトウェアで、診断には使用できません。
動画で見る
解説
Voxel:よお!みんな、ボクセルだ!GRAPHY-Nextを使って実践的な画像処理や解析を紹介していくこのチャンネル、今日も見てくれてありがとうな!
Voxel:先生!今日からは何について学ぶんですか?俺、早く新しいこと試したいんすけど!
Beyond先生:このチャンネルでは、GRAPHY-Nextを使って実践的な画像処理や解析を紹介していきます。面白いと思ったら、チャンネル登録・高評価、よろしくお願いします。
Beyond先生:はじめに一つお伝えします。GRAPHY-Nextは、WindowsとLinuxでの利用を推奨しています。
Beyond先生:はい、ボクセルくん。今回は医用画像処理において、さまざまな画像フォーマットをどう理解し、どう扱うかについて学びます。
Beyond先生:解析結果の信頼性を高めたり、データを適切に取り扱ったりするためには、とても大切な知識ですよ。
Voxel:フォーマットって、JPEGとかPNGみたいなやつっすか?医用画像って、そんなに種類があるんすか?まじか。
Beyond先生:そうですね。大きく分けて、医用画像の世界で標準語とされている『DICOM』、研究分野でよく使われる『NIfTI』、そして一般的な画像や動画、PDFなど、多様なフォーマットが存在します。
Voxel:標準語ってことは、DICOMが一番偉いってことっすね!目指すならナンバーワンだろ?
Beyond先生:そうですね。医用画像データの世界では、DICOMが事実上の国際標準フォーマットとして広く利用されています。
Beyond先生:DICOMは単なる静止画だけでなく、超音波、CT、MRI、X線といった多種多様なモダリティの画像データを格納できるんです。
Voxel:モダリティ?それってなんすか?
Beyond先生:モダリティとは、医用画像を撮影する装置や検査の種類のことです。MRIやCT、レントゲンなどがそれにあたりますね。
Voxel:なるほど!じゃあ、DICOMってのは、いろんな種類の医療画像をまとめて入れられるすごい箱ってことっすね!
Beyond先生:その通りです。DICOMの最大の特長は、画像データそのもの、つまり画素データと、患者情報、撮影条件、装置情報といった膨大なメタデータを一体として管理できる点にあります。
Voxel:画素とメタデータ?なんすかそれ。
Beyond先生:画素は、画像を構成する小さな点のことで、色や濃淡の情報を持っています。そしてメタデータは、データに関するデータのことです。
Beyond先生:医用画像で言えば、患者さんの名前や撮影した日時、使った装置の名前など、画像に付随するさまざまな情報がメタデータに当たります。
Voxel:ふーん。つまり、DICOMは画像と、その画像がどんなものかを説明するデータがセットになってるってことっすね!
Beyond先生:はい。この「画素とタグの組」が、医用画像の確実な識別とトレーサビリティを保証し、臨床現場での正確な診断や研究における再現性の基盤となっています。
Voxel:へえー、すごい!GRAPHY-NextでもDICOMファイルを扱えるんすか?
Beyond先生:もちろんですよ。GRAPHY-Nextでは、DICOM画像をデータベースに容易に取り込むことができます。画面左下のステータスバーを見てみましょう。

Voxel:おお!GRAPHY-Nextのバージョンが表示されてる!
Beyond先生:はい、GRAPHY-Nextは日々進化しているので、最新版で学ぶのがおすすめです。では、データベース画面を開いてみましょう。
Voxel:了解っす!これ、「はっさくMRI」のデータセットっすね。MRI以外にも、XAとかいうのもある!

Beyond先生:そうです。GRAPHY-Nextのデータベース画面では、DICOMデータがシリーズごとに整理され、異なるモダリティのデータが一覧表示されるため、多様な医用画像を統合的に管理できることが一目で理解できます。
Voxel:すげー!じゃあ、このシリーズを選んで、もっと詳しい情報を見るってこともできるんすか?
Beyond先生:はい、できますよ。どれかシリーズを選択して、詳細なタグ情報を確認してみてください。

Voxel:わー!なんか数字とか文字がいっぱい出てきた!これ全部、この画像に関する情報ってことっすか?患者さんの名前とか、撮影日時とか、装置の名前とかも全部入ってる!
Beyond先生:その通りです。DICOMデータには、画像だけでなく、それに付随する豊かなメタデータが存在することを実感できますね。
Voxel:これがあれば、どの画像が誰のもので、いつ、どんな装置で撮ったのか、全部バッチリ分かるわけっすね!安心感が違う!
Beyond先生:はい、その通りです。さて、次に研究分野でよく使われる『NIfTI』というフォーマットについて見ていきましょう。
Voxel:NIfTI!それな!脳の画像処理とかでよく聞くやつっすよね?
Beyond先生:ええ、特に脳機能画像研究の分野で広く利用されている医用画像フォーマットです。機能的MRIや拡散テンソル画像といった神経科学研究で標準的ですね。
Beyond先生:NIfTIファイルは一般的に『.nii』または『.nii.gz』という拡張子を持っています。GRAPHY-Nextでも簡単に取り込んで表示できますよ。
Voxel:おお、やってみたいっす!非DICOMデータ取り込みダイアログからNIfTIファイルを選択すればいいんすね?

Beyond先生:はい、その通りです。『はっさくMRI』のデータから変換したNIfTIファイルを用意しましたので、そちらを取り込んでみましょう。
Voxel:ポチッと!取り込み完了!データベースに表示されたっす!
NIfTIは取り込むときにDICOMへ変換される。77スライスと16スライスのシリーズになった
Beyond先生:データベースに取り込まれたNIfTIデータは、内部でDICOM形式に変換されて管理されます。
Voxel:まじか!NIfTIなのにDICOMに変換されてるんすか!じゃあ、ビューアで開いてみるっす!

Beyond先生:はい、変換後はDICOMデータと同じように2Dビューアで画像を確認できますね。
Voxel:おー、ちゃんと画像が見えるっす!でも、先生、なんかDICOMのときと違う違和感が…
Beyond先生:良い気づきですね、ボクセルくん。実はNIfTIフォーマットには重要な課題があります。NIfTIのヘッダはわずか348バイトしかなく、主に画像の寸法やボクセルサイズといった基本的な幾何学情報しか保持できないんです。
Voxel:え、348バイトって超少ないじゃないすか!俺のパソコンの画像ファイルなんて何MBもあるのに!
Beyond先生:そうなんです。これはDICOMが持つ患者名、撮影日時、TR/TEといった詳細な撮影条件や患者固有のメタデータが、NIfTIへの変換時にほとんど失われてしまうことを意味します。
Voxel:まじか!せっかくDICOMにいっぱい情報入ってたのに、NIfTIにしたら消えちゃうってことっすか?もったいねえ!
Beyond先生:そうですね。先ほど取り込んだNIfTI由来のシリーズのタグ情報を見てみましょう。元のDICOMにはあったRepetition TimeやEcho Time、Manufacturerといった撮影条件が失われていることが分かります。

Voxel:うわ!ほんとだ!ほとんど空っぽになってる!これじゃあ、何の画像だか分からなくなっちゃうじゃないっすか!
Beyond先生:この情報喪失を補うため、研究現場では『サイドカーJSON』という慣習が広く採用されています。
Voxel:サイドカーJSON?なんかカッコいい名前っすね!
Beyond先生:これはNIfTIファイルと同じディレクトリに、同名のJSONファイルを配置し、そこにDICOMから失われた撮影条件などのメタデータを退避させるというものです。
Voxel:へえ!NIfTIだけだと足りないから、別に情報メモを用意するってことっすね!
Beyond先生:その通りです。NIfTIは『画像本体』、そしてサイドカーJSONは『メタデータ』。この二つが二人三脚ではじめてDICOMと同じ情報量を持つ、と理解することが重要です。
Voxel:なるほど!NIfTIは画像だけ、詳細情報はサイドカーJSON、って感じっすね!
Beyond先生:ただし、NIfTI化は匿名化の手段ではありません。タグ情報が失われるのは副作用であり、画像画素そのものに焼き込まれた患者固有の情報は残ります。
Voxel:え、匿名化じゃないんすか?病変の形とかは残るってことっすか?
Beyond先生:はい。医療情報の保護には、別途厳格な匿名化処理が必要です。NIfTIの利用では、ADNIのような大規模な公開データセットでも、データの制約を理解することが不可欠です。
Voxel:ADNIってなんすか?
Beyond先生:ADNIは、アルツハイマー病研究のためにMRIやfMRIなどの画像を大規模に集めたデータセットです。NIfTIが使われることが多いのですが、研究利用に限られ、商用利用はできません。
Voxel:まじか!研究はOKで商用はダメって、ややこしいっすね。
Beyond先生:公開データを使う際は、画像が開けるかどうかよりも先に、その条件で使ってよいかを確かめることが大切です。これは実務でとても重要になります。
Voxel:それな!気をつけます!
Beyond先生:さて、医用画像処理の現場では、DICOMやNIfTIだけでなく、一般的な画像ファイルや動画ファイルを扱う機会もあります。例えば、JPEGやPNGといった静止画や、MP4のような動画です。
Voxel:え、写真とか動画もGRAPHY-Nextで取り込めるんすか?俺の撮った写真とか、ゲーム動画とかも?
Beyond先生:はい、GRAPHY-Nextはこれらの非DICOMファイルの取り込みにも対応しています。教育資料や患者さんへの説明用コンテンツとして使うこともありますからね。
Voxel:じゃあ、花の写真を取り込んでみるっす!

Beyond先生:取り込むと、GRAPHY-Nextの内部で『Secondary Capture』というDICOM形式に変換されます。Modalityタグは『OT』、つまりOtherが設定されます。
Voxel:Other!なるほど、元々DICOMじゃないけど、DICOMとして取り込んだから『その他』ってことっすね!じゃあ次は動画っす!俺のこの動画を!

Beyond先生:ええ、Voxelくんが居眠りしている動画、MP4ファイルですね。これもGRAPHY-Nextに取り込むと、『Video Photographic』というDICOMに変換され、Modalityタグには『XC』、External Cameraが設定されます。
Voxel:って、先生!俺が居眠りしてる動画じゃないっすからね!あれは深い思考に入ってる状態っす!
Beyond先生:失礼しました、深い思考の状態でしたね。重要なのは、DICOM標準は動画も扱えるということです。ただし、ここで一つ注意点があります。
Voxel:注意点?なんすか?
Beyond先生:同じ『DICOMの動画』でも、中身は2通りあるんです。冠動脈造影のように装置が最初からDICOMとして書き出したものは、通常の画素データが時間方向に並んだ『マルチフレーム』です。
Beyond先生:これは2Dビューアでそのまま再生できます。しかし、いま取り込んだMP4は、MP4ファイルを丸ごとDICOMの中に包んだ『encapsulated video』で、DICOM側から見ると画素を持っていません。
Voxel:まじか!画素がないってどういうことっすか?じゃあ、2Dビューアで開けないんすか?
Beyond先生:その通りです。そのため、GRAPHY-Nextではメイン画面でシリーズを選んだときに出る専用プレイヤーで再生します。
Voxel:へえー!取り込めたのにビューアで開かないのは、バグじゃなくてそういう構造の違いなんすね!
Beyond先生:はい。『フォーマットが違えば、置き場所も開き方も変わる』。これが今回、繰り返し出てくるテーマです。
Beyond先生:次に、PDFのような文書フォーマットも医用画像処理に関連して管理するケースがあります。例えば、患者さんの同意書や検査結果レポートなどですね。
Voxel:PDFも!?まじか。まさかGRAPHY-Nextで論文読めるとか?
Beyond先生:ええ、可能です。私が執筆したRadiomicsJに関する論文PDFを例に、取り込んでみましょう。このPDFはSpringerに版権があるので、ファイル自体は添付できませんが、取り込み画面は見ていただけます。

Voxel:おお、データベースに表示されたっす!でも、これはさすがにビューアでは開けないっすよね?
Beyond先生:はい、PDFは画素データを持つ画像とは異なる文書フォーマットなので、画像ビューアで直接内容を表示することはできません。
Beyond先生:その代わり、『開く/ダウンロード』という形で、外部のPDFビューアで開いたり、ローカルに保存したりする機能が提供されます。
Voxel:なるほど!PDFも『Encapsulated PDF』というDICOM形式に変換されて、Modalityタグは『DOC』、Documentになるんすね!
Beyond先生:その通りです。GRAPHY-Nextは、取り込むデータのフォーマットがDICOMであろうと、NIfTIであろうと、JPEGやMP4のような一般フォーマットであろうと、あるいはPDFであろうと、
Beyond先生:いったん内部ですべてのデータをDICOM形式に変換して管理するという『DICOM一元化』戦略を採用しています。
Voxel:おー!それが先生が言ってた『統一されたインターフェース』ってやつっすね!
Beyond先生:はい。例えばNIfTIはDICOMに変換され、Z(スライス)・C(チャンネル)・T(時相)の3つの次元に展開されます。マルチチャンネルやマルチタイムフレームのNIfTIなら、ビューアでZ・C・Tを切り替えて表示できます。
Beyond先生:一般画像はSecondary Captureに、動画はVideo Photographicに、そしてPDFはEncapsulated PDFに、それぞれ適切なModalityタグが設定されて変換されます。
Voxel:すげー!全部DICOMになるんすね!じゃあ、取り込んだ後のタグ情報を見て、本当にそうなってるか確認したいっす!

Beyond先生:はい、見てみましょう。SOPClassUIDやModalityが適切に設定され、入口のフォーマットが異なっていても、内部的には統一されたDICOMの枠組みで情報が整理されていることが確認できますね。
Voxel:おー!ほんとだ!なんか安心するっす!これなら、どんなデータが来てもGRAPHY-Nextに任せときゃ大丈夫って感じっすね!
Beyond先生:まさにその通りです。このDICOM一元化戦略は、データ管理の複雑さを軽減し、将来的な互換性や拡張性を高める上で非常に重要な役割を果たします。
Beyond先生:研究者はフォーマットの違いに悩まされることなく、データの解析そのものに集中できるようになります。
Voxel:うおおお!すげえ!ってことは、GRAPHY-Nextって超優秀な通訳者兼整理整頓の達人ってことっすね!
Beyond先生:良い表現ですね、ボクセルくん。まさにそういう役割も担っています。今日のまとめです。
Beyond先生:今回は、DICOM、NIfTI、一般画像、PDFといった主要な医用画像フォーマットについて学びました。
Beyond先生:特にNIfTIのメタデータ管理の課題と、サイドカーJSONの重要性を理解し、フォーマット選択が情報の保持にどう影響するかを認識できたことでしょう。
Beyond先生:そして、GRAPHY-Nextがこれら全ての非DICOMデータを内部的にDICOM形式に一元化する戦略が、多様なデータを統一的に扱う上で大きな利点となることも学びました。
Voxel:フォーマットって奥が深いっすね!ただ画像が見えればいいってわけじゃないって、改めて分かりました!
Voxel:医用画像の適切な取り扱いと情報管理のためには、フォーマットの特性を理解することが超重要ってことっすね!
Beyond先生:はい、その通りです。今回の内容が、皆さんの医用画像データの向き合い方の一助となれば幸いです。
Voxel:GRAPHY-Next、まじで可能性無限大っす!これからもこのチャンネルでは、GRAPHY-Nextを使った実践的な画像処理や解析をどんどん紹介していくから、
Voxel:「面白いな!」「もっと知りたい!」って思ったそこのキミ!ぜひチャンネル登録と高評価、よろしく頼むぜ!
Beyond先生:次回もGRAPHY-Nextのさらなる活用法について深掘りしていきますので、どうぞお楽しみに。
Voxel:またなー!
操作手順のまとめ
- GRAPHY-Next の版を確認する — GRAPHY-Next を起動し、画面左下のステータスバーで動作中の版を確認します。本記事は v0.2.8 の画面で解説しています。GRAPHY-Next は更新が続いているため、手元の版と画面が違うときは最新版に更新してから読み進めてください。
- 記事の画面と手元の画面が食い違う原因の多くは版の違いです。最初に確認しておきます。
- GRAPHY-NextでのDICOMデータベース表示 — GRAPHY-Nextを起動し、データベース画面を開きます。取り込まれている「はっさくMRI」のシリーズ一覧から、MRモダリティのDICOMデータが一覧表示されていることを確認します。画像は、商用利用可能な「はっさくMRI」データセットから取得しています。
- DICOMは多様なモダリティに対応しており、GRAPHY-Nextがそれらを統合的に管理していることを確認します。
- DICOMデータのタグ情報確認 — データベース画面で、いずれかの「はっさくMRI」シリーズを選択し、詳細なタグ情報を表示します。画素データと付随するメタデータが一体となっていることを確認します。
- DICOMが持つ豊富なメタデータ(タグ)の存在を理解します。
- NIfTIファイルの取り込み準備 — GRAPHY-Nextのデータベース画面で「非DICOMデータ取り込み」を選択し、NIfTIファイル(例:
hassaku-3dt1-geir.nii.gzまたはhassaku-t2-ax.nii.gz)を選択します。画像は「はっさくMRI」を変換した.nii.gzファイルを使用しています。- NIfTIファイルは「非DICOMデータ」として扱われるため、専用の取り込みダイアログを使用します。
- NIfTI取り込み結果の確認 — NIfTIファイルの取り込みが完了すると、データベース画面に新しいエントリとして表示されます。その情報がDICOM形式に変換されていることを確認します。
- GRAPHY-NextがNIfTIを内部的にDICOMへ変換することを確認します。
- NIfTIデータのビューア表示 — 取り込んだNIfTIデータを選択し、ビューアで画像を表示します。
- NIfTIフォーマットの画像が正しく表示されることを確認します。
- NIfTI 由来シリーズのタグを見て、何が失われたかを確かめる — NIfTI から取り込んだシリーズで DICOM タグを開き、RepetitionTime・EchoTime・Manufacturer・PatientName を探します。元の DICOM では TR=6919 ms / TE=88.8 ms / 1.5T という値が入っていましたが、NIfTI を経由したシリーズには残っていません。先に見た DICOM のタグ一覧と並べると、同じ画像なのに持っている情報が違うことが分かります。
- この差を埋めるのがサイドカー JSON です。本記事の .nii.gz には添付していないため、撮影条件は失われたままになります。
- 一般画像ファイルの取り込み — JPEG形式の花の写真(例:
flower-sunflower.jpg)をGRAPHY-Nextのデータベースにドラッグ&ドロップまたはファイル選択で取り込みます。画像は著者撮影の商用利用可能な写真を使用しています。- 一般画像が「Secondary Capture」としてDICOM化され、Modalityが「OT」となることを確認します。
- 動画ファイルの取り込み — MP4形式の動画ファイル(例:
voxel-sleeping.mp4)をGRAPHY-Nextのデータベースにドラッグ&ドロップまたはファイル選択で取り込みます。動画は本連載キャラクターVoxelのものです。- 2D ビューアでは再生できません。encapsulated video は画素を持たないため、メイン画面でシリーズを選んだときに出るプレイヤーで再生します(standalone モードのみ)。
- PDFファイルの取り込み — PDFファイル(例:
radiomicsj-kobayashi-2022.pdf)をGRAPHY-Nextのデータベースにドラッグ&ドロップまたはファイル選択で取り込みます。PDFは著者の論文です(版権はSpringer)。- PDFが「Encapsulated PDF」としてDICOM化され、Modalityが「DOC」となることを確認します。
- 取り込み後のタグ情報確認 — 取り込んだNIfTI、一般画像、動画、PDFから変換されたDICOMデータそれぞれを選択し、そのタグ情報を表示します。SOPClassUIDやModalityが、GRAPHY-NextのDICOM一元化戦略に従って設定されていることを確認します。
- 非DICOMデータがどのようにDICOMへ変換されたか、具体的なタグで確認します。
用語
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| DICOM | 医用画像と関連情報を統合的に扱うための国際標準フォーマット。 |
| NIfTI | 脳機能画像研究で広く利用される、主に画像データと基本的な幾何学情報を格納するフォーマット。 |
| サイドカーJSON | NIfTIファイルに付随し、NIfTIヘッダで保持できない撮影条件などのメタデータを格納するJSONファイル。 |
| モダリティ (Modality) | 医用画像の撮影装置や検査の種類(例: MRI, CT, XA, USなど)。 |
| 画素 | デジタル画像を構成する最小単位で、色や濃淡の情報を保持する。 |
| メタデータ | データに関するデータ。医用画像では、患者情報、撮影条件、装置情報などを指す。 |
いまはどうなっているか
医用画像処理の分野では、DICOMやNIfTIに加え、以下のような現代的な技術やフォーマットが注目されています。 * DICOM SEG(Segmentation Object):DICOM標準の拡張であり、画像から抽出された領域(ROIやセグメンテーション結果)を画像本体とは独立したDICOMオブジェクトとして保存・交換するフォーマットです。これにより、解析結果の標準化と異なるシステム間での共有が容易になり、より高度な定量解析やAI開発におけるデータアノテーションに貢献します。 * OME-Zarr:Open Microscopy Environment (OME) が提唱する、大規模な多次元バイオイメージングデータを効率的に保存・アクセスするためのクラウドネイティブなフォーマットです。Webベースでのデータ共有や分散処理に適しており、高解像度・多チャンネル・時系列の顕微鏡画像データなどを扱うモダンなバイオイメージング解析プラットフォームで採用が進んでいます。
まとめ
本記事では、医用画像処理の基礎となる主要なフォーマット、すなわちDICOM、NIfTI、そして一般画像やPDFについて学びました。特に、NIfTIが持つメタデータ管理の課題と、それを補完するサイドカーJSONの重要性を深く理解し、フォーマット選択が情報の保持にどう影響するかを認識できたことでしょう。GRAPHY-Next v0.2.8がこれら全ての非DICOMデータを内部的にDICOM形式に一元化する戦略は、多様なデータを統一的に扱い、解析を進める上で大きな利点となります。医用画像の適切な取り扱いと情報管理のために、フォーマットの特性を理解することは、研究や臨床応用において不可欠です。
この記事で使ったデータ
第2回のフォーマット比較一式。はっさく MRI(DICOM)と、それを変換した NIfTI 2 本、 花の写真 3 枚(JPEG)、キャラクター動画 1 本(MP4)、著者の論文 PDF 1 本(自前撮像・著者撮影・自作(Visionary Imaging Services, Inc.)— 商用利用可。 ただし PDF(RadiomicsJ 論文)の版権は Springer 側にあるため、 PDF 本体の添付・再配布はしない(取込画面を見せるだけ))
参考文献
- Digital Imaging and Communications in Medicine (DICOM) Standard Part 3: Information Object Definitions(NEMA (National Electrical Manufacturers Association)) https://www.dicomstandard.org/current
- PS3.18 Annex F: JSON Model of DICOM Attribute Sets(DICOM Standard) https://www.dicomstandard.org/current/docs/ps3.18.pdf
- dcm2niix GitHub Repository(Chris Rorden’s homepage) https://github.com/rordenlab/dcm2niix
- GRAPHY-Next GitHub Repository(tatsunidas/GRAPHY-Next) https://github.com/tatsunidas/GRAPHY-Next
- GRAPHY-Next マニュアル(GRAPHY-Next公式ドキュメント) https://tatsunidas.github.io/GRAPHY-Next/docs/
- RadiomicsJ: a library to compute radiomic features.(Radiol Phys Technol. 2022.) https://doi.org/10.1007/s12194-022-00664-4
VOICEVOX:白上虎太郎/四国めたん
前の回: 第1回 / GRAPHY-Nextで学ぶ医用画像処理 の記事一覧