P (前立腺がん), I (225Ac/177Lu放射性医薬品治療), C (異なる細胞幾何学/薬剤取り込み/腫瘍形態), O (核吸収線量と線量不均一性)。
導入 – 前立腺がん放射性医薬品治療の未来を探る
どうも、Beyond the Pixelです。前立腺がんの放射性医薬品治療(RPT)は、病変を標的としつつ正常組織への影響を最小限に抑える有望なアプローチです。アクチニウム-225(225Ac)やルテチウム-177(177Lu)に標識されたPSMA(前立腺特異的膜抗原)結合放射性医薬品が、その優れた治療効果から大きな期待を集めています。しかし、アルファ線(225Ac)とベータ線(177Lu)は物理的特性が異なり、細胞レベルでの反応も多様です。この反応は、腫瘍の形態などの要因によって影響を受ける可能性があります。本研究では、シミュレーションを用いて、細胞の幾何学的形状、薬剤が細胞内に取り込まれる割合、そして腫瘍内の低酸素領域や壊死領域の存在が、細胞核に吸収される線量と線量の不均一性にどのように影響するかを明らかにしました。さらに、オートラジオグラフィー画像への応用を可能にする細胞核吸収線量カーネルも開発しています。
研究方法 – 複雑な細胞環境をシミュレーションで再現
本研究では、Geant4 Application for Tomographic Emission (GATE) というモンテカルロシミュレーションソフトウェアを用いて、前立腺がん細胞(LNCaP細胞)の3種類の幾何学的形状(球形、立方体、卵形)をモデル化しました。放射性核種(225Acまたは177Lu)の活性は、細胞質内に取り込まれた場合と、細胞外膜に結合した場合の2つのパターンで設定されました。これにより、薬剤の細胞内取り込み割合の違いをモデル化しています。各細胞の形状、線源領域、および同位体について、細胞核に吸収されるS-値を算出しました。これらの単一細胞モデルは、細胞層内の各細胞核への線量を示す「細胞核吸収線量カーネル」を作成するために使用されました。これらのカーネルは、正常酸素、低酸素、または壊死したがん細胞で構成されるシミュレーション腫瘍に適用され、線量率マップが得られました。腫瘍内の吸収線量と線量不均一性が、腫瘍の形態と放射性核種の種類ごとに分析されています。なお、本シミュレーションの妥当性は、MIRDcell V3.10という多細胞ドシメトリーツールと比較することで検証されました。その結果、自己線量のS-値の差は177Luで1%以内、225Acで4%以内であり、交差線量のS-値の差は177Luで5%以内、225Acで3%以内であることが確認されています。
Table 2. Table 2 The self-dose and cross-dose S-values from MIRDcell and our GATE simulations in units of mGy/Bq/s解説: MIRDcellとGATEシミュレーションから得られた自己線量および交差線量のS-値(mGy/Bq/s単位)をまとめています。177Luと225Acそれぞれについて、MIRDcellの値、GATEの値、および両者間のパーセント差が示されています。
Table 3. Table 3 The S-values in units of Gy/Bq/s for 177Lu and 225Ac from the source (column) to the target nucleus (row) for the different cell geometries解説: 異なる細胞幾何学的形状(球形、立方体、卵形)における177Luと225Acの細胞核へのS-値(Gy/Bq/s単位)を示しています。細胞質および細胞膜を線源とした場合のS-値、および225Ac対177LuのS-値比率が記載されています。また、細胞形状間のS-値のパーセント差も比較されています。
Figure 1. Fig. 1 The three cell geometries analyzed in this work, the spherical (left), cubic (middle), and ovoid (right) cell. Images were generated using visualization options in GATE解説: 本研究で分析された3種類の細胞幾何学的形状(左から球形、立方体、卵形)を示しています。細胞の核(緑)、細胞質(黒)、および膜(マゼンタ)で構成されています。
Figure 2. Fig. 2 The 225Ac cell distribution for the cubic cell kernel modelled in GATE. The cell with the green nucleus is the source cell. The 177Lu cubic kernel was identical, however was 56 × 56 cells instead of 10 × 10解説: GATEでモデル化された立方体細胞カーネルの225Ac細胞分布を示しています。緑色の核を持つ細胞が線源細胞であり、複数の細胞が格子状に配置されている様子が分かります。
Figure 3. Fig. 3 A 2D, 5 cell × 5 cell subset of the input for the simulation of the spherical absorbed dose kernels (not to scale) with one full cell geometry in the bottom left quadrant. All other cells contain only the cell nucleus and extranuclear region. The white gaps are water density and the black lines represent the pixel boundaries解説: 球形吸収線量カーネルのシミュレーション入力の一部(5×5細胞の2Dサブセット)を示しています。左下象限に完全な細胞幾何学が配置されています。他の細胞は細胞核と核外領域のみを含み、白い間隙は水の密度、黒い線はピクセル境界を表します。膜線源カーネルと細胞質線源カーネルの2種類が示されています。
各カーネルの最終寸法と長さについては、
Table 1. Table 1 The final dimensions and lengths of all kernels post-processing解説: カーネルの後処理後の最終的な寸法と長さを示しています。球形と立方体の細胞幾何学それぞれについて、225Acと177Luにおけるマトリックスサイズと長さ(µm)が記載されています。
Figure 4. Fig. 4 a All 225Ac kernels. b All 177Lu kernels. c Profile view through the center of the kernels intended to show the differences between the spherical and cubic kernels. One half of the symmetrical kernel is shown. The spherical kernels are solid lines and the cubic kernels are dashed lines. d Profile view through the center of the cytoplasm source kernels intended to show the differences between 177Lu and 225Ac. Each pixel represents one cell解説: (a) 全ての225Acカーネル、(b) 全ての177Luカーネルを示しており、細胞の形状と線源の位置(細胞質または膜)による線量分布の違いを表しています。(c) カーネルの中心を通過するプロファイルビューは、球形カーネルと立方体カーネルの違いを示しています。(d) 細胞質線源カーネルの中心を通過するプロファイルビューは、177Luと225Acの違いを示しています。各ピクセルは1つの細胞を表し、225Acは177Luよりも急速にエネルギーを沈着させる傾向が視覚的に確認できます。
Table 4. Table 4 The number of cells of each type in each tumour morphology解説: 各腫瘍形態(小規模・大規模の正常酸素性、低酸素性、壊死性)における、各細胞タイプ(正常細胞、血管、正常酸素性、低酸素性、壊死性)の細胞数を示しています。
その結果、腫瘍内の線量分布において、腫瘍の形態が非常に大きな影響を与えることが明らかになりました。
Figure 5. Fig. 5 The top row shows the multicellular tumour models, while the subsequent rows show DR/A images in units of nGy/Bq/s after applying the 177Lu (middle) and 225Ac (bottom) spherical nucleus kernels (with a 3:1 cytoplasm to membrane internalization ratios)解説: 上段は多細胞腫瘍モデルを示し、後続の行は177Lu(中央)と225Ac(下段)の球形細胞核カーネル(細胞質対膜の取り込み比3:1)を適用した後の、nGy/Bq/s単位の線量率(DR/A)画像を示しています。細胞タイプとして正常細胞、血管、壊死細胞、正常酸素性細胞、低酸素性細胞が示されており、腫瘍の形態と放射性核種によって線量分布が異なることが分子レベルで可視化されています。
Figure 6. Fig. 6 Mean DR/A values (nGy/Bq/s) to all cell types for each tumour type (3:1 cytoplasm to membrane radiopharmaceutical internalization ratio and a: spherical and b: cubic cell kernel) for 177Lu (left column) and 225Ac (middle column). The right column shows the ratio of the DR/A from 225Ac to 177Lu for each cell type and tumour morphology解説: (a) 球形細胞カーネル、(b) 立方体細胞カーネルを用いた、各腫瘍タイプにおける全細胞タイプに対する平均線量率(DR/A値、nGy/Bq/s)を示しています。左列は177Lu、中央列は225Acのデータを示し、右列は各細胞タイプと腫瘍形態における225Acと177LuのDR/Aの比率を示しています。腫瘍形態に応じて細胞タイプごとの平均DR/A値が異なることが示されています。
Table 5. Table 5 The mean DR/A and associated standard deviation to each cell type and each tumour morphology from all the nucleus absorbed dose kernels (the spherical and cubic kernels and the 3:1, 1:1, and 1:3 internalization ratio kernels for each geometry) for 177Lu and 225Ac for all tumour morphologies解説: 全ての細胞核吸収線量カーネル(球形と立方体のカーネル、および細胞質対膜の取り込み比3:1、1:1、1:3のカーネル)を平均した、各腫瘍形態および各細胞タイプに対する平均線量率(DR/A、nGy/Bq/s)および関連する標準偏差を示しています。177Luと225Acそれぞれについてデータが提示されており、腫瘍形態が細胞タイプごとのDR/Aに顕著な違いをもたらすことが示されています。
Figure 7. Fig. 7 DVHs for each tumour morphology and cancer cell type for the spherical cell geometry and 3:1 membrane to cytoplasm internalization ratio as a percentage of the total absorbed dose解説: 各腫瘍形態およびがん細胞タイプにおける線量体積ヒストグラム(DVH)を示しています。これは、球形細胞幾何学と細胞質対膜の取り込み比が3:1の場合のデータです。この図は、腫瘍内で吸収線量がどのように分布しているか、特に低酸素性および壊死性腫瘍において線量分布が非常に不均一であることを示しています。
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