大腸がん診療における画像診断の役割:ESGARの提言を解説

解説対象論文: ESR Essentials: Imaging in colorectal cancer—practice recommendations by ESGAR
European Radiology|被引用数: 25(2026年7月15日時点)
大腸がんは世界的に重要な健康課題であり、診断画像は早期発見からフォローアップまで、その管理において極めて重要な役割を担っています。このブログ記事では、欧州消化器・腹部放射線学会(ESGAR)が発表した、大腸がん診療における画像診断の実践的推奨事項について、その要点を解説します。
はじめに:大腸がん管理における画像診断の重要性
どうも、Beyond the Pixelです。大腸がん(Colorectal Cancer, CRC)は、世界中で3番目に多く診断されるがんであり、がん関連死の4番目の主要原因として、地球規模での重大な健康問題です。早期発見から治療後のフォローアップに至るまで、様々なモダリティを用いた診断画像は大腸がんの各段階で中心的な役割を果たします。本記事では、欧州消化器・腹部放射線学会(ESGAR)による最新の実践的推奨事項に基づき、大腸がんのスクリーニング、診断、病期診断、治療反応評価、そしてフォローアップにおける画像診断の重要な役割を詳しく見ていきます。
大腸がんスクリーニング:早期発見が鍵
大腸がんスクリーニングは、罹患率と死亡率を減少させるために不可欠です。スクリーニング検査には、便を基にした検査と視覚検査があります。便を基にした検査には、便潜血検査(FIT)とグアヤック便潜血検査(gFOBT)があり、これらは死亡率を18%から21%減少させるとされています。視覚検査には、軟性S状結腸内視鏡検査(FS)、大腸内視鏡検査(CC)、CTコロノグラフィー(CTC)があり、これらは死亡率を41%から73%減少させると推定されています。CTCは大腸内視鏡検査と比較して進行性腺腫の検出能はわずかに劣るものの、便検査より優れています。組織化されたスクリーニングプログラムにおいては、CTCの役割は、便検査陽性で大腸内視鏡検査を受けられない対象者や、大腸内視鏡検査が不完全な対象者に限定されます。

大腸がんスクリーニングにおいて、画像診断は補助的な役割を果たすだけでなく、場合によっては直接観察法に代わる選択肢ともなり得ます。
大腸がんの診断:偶然の発見から専門検査まで
大腸がんは、主に症状のある対象者またはスクリーニングの一環として行われる大腸内視鏡検査で発見・診断されます。病変の生検は、組織学的確認だけでなく、がんの遺伝子プロファイルの評価のためにも必須です。大腸内視鏡検査が不完全な場合や、虚弱な高齢の対象者には、CTCが診断の有力な代替手段となり得ます。また、CTCは不完全な大腸内視鏡検査の場合に同期性病変を除外するためにも重要な役割を果たします。一方、大腸がんは、通常の腹部画像検査(CT、US、FDG PET/CT、MRIなど)中に偶然発見されることもあれば、腸閉塞や穿孔の症状で救急搬送された対象者で発見されることもあります。大腸内視鏡検査はCRCおよびポリープの検出のゴールドスタンダードですが、重要なポリープの見落とし率も指摘されており、検査の質の向上が求められます。同様に、CTCの質も技術(拡張、CTプロトコル、大腸準備)や専門家の読影(CTソフトウェア、トレーニング)に厳密に依存します。

病期診断:治療方針を決定する重要なステップ
病期診断は、治療方針を決定し、貴重な予後情報を提供する上で、大腸がん管理の極めて重要な側面です。AJCC(TNM)病期分類システムが用いられ、これによって専門家は病気の進行度を正確に評価し、最適な治療アプローチを決定します。直腸がんと結腸がんの両方において、正確な局所病期診断は適切な治療フローを導くために必須です。
結腸がんの局所病期診断
これまで結腸がんの局所病期診断は主要な関心事ではありませんでしたが、術前化学療法の潜在的な利点に関する臨床試験結果により、より良い放射線学的基準の必要性が高まっています。CTレポートには、壁浸潤の評価(高リスク対象者:cT3cdおよびcT4aの特定)、脈管浸潤(EMVI)の状態の評価、上行結腸および下行結腸病変の後腹膜断端の評価を含める必要があります。CTは結腸がんの局所病期診断における選択モダリティですが、MRIがCTを上回る潜在的な役割を持つとする予備研究もあります。両モダリティともにリンパ節病期診断(N病期診断)には限界があります。
直腸がんの局所病期診断
直腸がんの画像診断の役割は、壁浸潤(T病期診断)とリンパ節病変(N病期診断)の評価だけでなく、中直腸間膜筋膜(CRM)の状態、脈管浸潤(EMVI)の有無、腫瘍沈着、低位直腸がんにおける肛門括約筋の浸潤など、追加の予後不良因子の検出も含まれます。これらの評価により、対象者を高リスク、中リスク、低リスクのカテゴリに層別化し、個別化された治療を可能にします。非浸潤性直腸腫瘍(cT1-2)には、高分解能プローブで壁の異なる層を識別できるため、経直腸超音波検査(EUS)が推奨されます。中等度から進行性の直腸がん(cT3-T4)には、壁外浸潤やEMVI、CRM状態、腫瘍沈着などの高リスク所見を評価する精度が高いため、MRIが推奨されます。リンパ節病変の評価は依然として課題です。

遠隔病期診断と再病期診断
CTは、その利用しやすさ、堅牢性、再現性から、大腸がんの遠隔病期診断の主力ですが、小さな肝病変、腹膜結節、骨転移の検出には限界があります。肝切除の対象となる対象者には、拡散強調画像と肝特異的造影剤(Gd-EOB-DTPA)を組み合わせたMRIが選択される画像モダリティです。腹膜癌腫症の評価では、CTとMRIは同等の性能を示しますが、最近の証拠はMRIにわずかな優位性を示しています。FDG PET/CTは、CTと比較して遠隔転移の検出を改善するために、選択された症例で使用されることがあります。新しい放射性薬剤(例:[68Ga]FAPI PET)は、小さな転移性肝病変、腹膜病変、脳病変の検出において、[18F]FDG PET/CTよりも優れた性能を示し、PETイメージングの役割をさらに改善する可能性があります。
治療反応評価とフォローアップ:個別化されたアプローチへ
直腸がんにおいて、術前化学放射線療法(CRT)後の治療反応評価は、完全奏効を示した対象者に対して、臓器温存手術や経過観察戦略といった従来とは異なる個別化された治療選択肢が提供されるようになったため、非常に重要です。MRIは最も正確な検査であり、「ほぼ完全奏効」という定義が好まれます。これは、線維性瘢痕内の病理学的シグナルがないことを指しますが、少数の生存する腫瘍細胞の存在を完全に排除することはできません。MRIと内視鏡検査の組み合わせにより、完全またはほぼ完全奏効を評価する最高の性能が保証されます。
フォローアップは、腫瘍学会の一般的な推奨事項に従って行われます。再発の大部分(約80%)が最初の3年以内に発生し、さらに15%が3年から5年の間に発生するため、最初の3年間はより集中的なフォローアップが推奨され、5年後には中止されます。しかし、根治的治療を受けた対象者において、術後2年間、6ヶ月ごとのCTスキャンが生存率に影響を与えないという最近の研究結果もあります。これらの結果は、より積極的なフォローアップの真の利点を深く理解し、可能であれば、対象者を低リスクと高リスクのカテゴリに層別化し、少なくとも2つの異なる経路を持つフォローアップ戦略を再設計することを示唆しています。
現在のところ、身体診察、CEA血液レベル、大腸内視鏡検査に加え、胸部、腹部、骨盤のCTスキャンが、TNM分類に基づき再発リスクが高い対象者に対して、最初の3年間は6〜12ヶ月ごとに繰り返すことが推奨されています。

まとめ
大腸がんは、診断から管理まで多岐にわたる段階で画像診断が中心的な役割を果たす一般的な疾患です。スクリーニングでは様々な画像モダリティが補助として、または直接観察法に代わるものとして使用でき、遠隔転移の評価には不可欠です。また、フォローアップ戦略の再評価は、対象者の個々の再発リスクに応じて検討されるべきです。適切なモダリティを選択し、その特性を理解することが、対象者一人ひとりに最適な治療を提供するために不可欠です。将来の展望として、新しい放射性薬剤を用いたPETイメージングの進化や、個別化されたフォローアップ戦略の検討が期待されます。
用語集
- CTコロノグラフィー (CTC): CTを用いた大腸の検査方法。内視鏡を挿入せず、大腸の3D画像を生成し、ポリープや病変を検出します。
- 大腸内視鏡検査 (CC): カメラ付きの細い管を大腸に挿入し、内部を直接観察する検査。ポリープの切除や生検も可能です。
- FDG PET/CT: 放射性薬剤(FDG)を注入し、がん細胞の活動性を捉えるPETと、体の構造を詳細に映し出すCTを組み合わせた検査。転移の検出に有用です。
- MRI: 強力な磁気と電波を利用して体内の画像を生成する検査。特に軟部組織(直腸壁、リンパ節など)の評価に優れています。
- N病期診断: がんのリンパ節転移の有無と程度を評価する病期診断。
- 脈管浸潤 (EMVI): 腫瘍細胞が血管やリンパ管に浸潤している状態。特に直腸がんにおいて予後不良因子の一つとされます。
- 中直腸間膜筋膜 (CRM): 直腸を囲む脂肪組織(中直腸間膜)の外側境界にある筋膜。直腸がん手術でこの筋膜にがんが浸潤していると予後不良とされます。
- 腫瘍退縮度 (TRG): 術前治療(化学療法や放射線療法)後のがんの縮小度合いを評価する指標。画像診断や病理学的検査で評価されます。
Leave a Reply